ドイツでは、コロナ禍で病院を救済

 1カ月ほど前、1年に1回ほどしか会わない友人夫婦と1年ぶりに会いました。何と、二人とも新型コロナに感染していたというのです。夫のニックが心筋梗塞でカテーテル手術でステントを入れ、入院中に感染したのではないかといいます。退院後に検査して判明します。妻のイレーネにも移ってしまいました。

 幸い二人の症状は軽く、自宅隔離する程度で回復したということでした。

 ドイツではコロナ禍で、新型コロナ感染患者を受け入れる病院は、集中治療室をコロナ患者に優先的に使用してきました。手術室を集中治療用に改造し、受け入れ体制も拡大しました。

 そのため、他の病気で手術が必要な患者の手術を延期せざるを得なくなります。ようやく、他の患者の手術が再開されたと見られます。

 ドイツの病院は緊急時以外、外来患者を受け入れません。家庭医などからの患者委託願いがないと、検査も入院もできません。コロナ感染の疑いがある患者はまず、各地域に設置されたホットラインか家庭医に相談します。その後に、検査を受けます。検査で陽性となった場合、症状に応じて入院すべきかどうかが判断されます。

 家庭医での感染拡大を防止するため、直接家庭医にいってはいけないと厳しく注意勧告されていました。でも家庭医での感染を恐れ、一時他の患者が家庭医ばかりでなく、歯医者など他の開業医のところに診察にいかない事態にもなりました。

 その結果、コロナ禍で病院や開業医が減収する状況に陥ります。

ベルリン中央駅駅前広場。今でこそ、こんなに市民が集まるようになったが。。。

 日本でも、状況は同じようです。全国公私病院連盟が7月末に発表したところによると、4月と5月の病院の収益状況は、新型コロナ患者を受け入れた病院のほうが受け入れなかった病院よりも悪化、より減収していたことがわかりました。

 この状況に対応するため、ドイツ政府はいち早く、コロナ感染患者を受け入れる病院に対して支援策を講じました。これについて、ぼくは2020年6月中旬、日本の新聞紙上でドイツのコロナ支援策を報告した記事の中で簡単に述べています。

 ただその記事がネット上で公開されていない上、内容もごく簡単なものだったので、ここで少し詳しく取り上げておきたいと思います。

 前述したように、病院はコロナ感染者を受け入れるため、他の患者を受け入れなかったり、他の患者の手術を延期しました。それによる損失を補填するため、病院に2020年9月末まで、コロナ患者用に病床を用意した場合、その病床に対して1日当たり560ユーロ(約7万円)支給します。

 さらに、コロナ患者用に新しく集中治療病床を用意した場合、その病床に対して5万ユーロ(約60万ユーロ)給付します。

 ドイツはこうして、コロナ患者用に病床を拡大してきました。

 また医師や看護師、介護師のマスクや防護服などにコストがかかることから、コロナ患者一人当たり50ユーロ(約6000円)/日を補助します。これは必要に応じ、補助期間を延長するほか、補助額を引き上げるとしています。

 また、病院に給付される患者一人当たりの看護報酬(看護と介護)を1日当たり185ユーロ(2万3000円)に引き上げました(約5000円増額)。

 集中治療病床を効率的に利用するため、集中治療病床の登録サイトを設置し、集中治療病床に空きのある病院を素早く検索できるシステムも構築しました。

 日本では、ドイツのような病院救済策がないと聞いています。感染が拡大する中、PCR検査を拡大させなかった政策といい、日本のコロナ対策にはいろいろ疑問を持たざるを得ません。

 また日本では、SNS上でコロナ患者を看護する看護師や介護師に対する感謝の気持ちを述べると、批判を受けるとも聞いています。

 コロナに対する政治の対応や感染者に対するパッシングも含め、日本社会は一体どうしてしまったのかと思えてなりません。

 なおドイツのシュパーン保健相は、コロナ禍で看護師や介護師にボーナス一時金1500ユーロ(約18万円)を給付したいと発言しました。しかしその約束は、財源を確保できないことからまだ実現されていません。

(2020年7月31日、まさお)

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関連サイト:
ロベルト・コッホ研究所の新型コロナ統計ダッシュボード
ドイツ政府の医療介護機関支援情報(ドイツ語)

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