市民は新しい技術についていけるか
前回、新型コロナの流行で広がっているデジタル化について述べた。そこでは、ユーザにやさしい操作を提供しないと、デジタル技術を使えるか、使えないかで格差が生じる可能性があることを指摘した。
それは、デジタル化だけの問題ではない。すべての技術に関わる問題だ。ここでは、特別にデジタル化の問題に限定せず、技術全般について、この問題について述べたいと思う。
現在、技術の新しくなるテンポが格段に加速している。新しい技術が普及するかしないかのうちに、また新しい技術が登場する。その技術革新合戦が、経済を成り立たせるともいえる。新しい技術が出たら、それを超える新技術を市場に出す。こうして経済が活性化され、経済成長をもたらす。
これが、20世紀初期の経済学者ヨーゼフ・シュンペーターのいった創造的破壊ということなのだと思う。シュンペーターは、経済成長の概念の発案者でもあった。
現在、技術革新のテンポがすやまじいくらいに早くなってきた。
問題は、一般市民がそのテンポについていけるかだ。デジタル化と新技術に精通している若い人たちは、問題ないと思う。でも中年から高年層になると、そう簡単にはいかない。今も、パソコンを使えてもちょっとした問題が生じると、にっちもさっちもいかない人がたくさんいる。
デジタル化と新技術が進むと、それを使えるかどうかで格差が生まれる。たとえば、小さいときからスマホやタブレットパソコンを使っている人とそうでない人では、成長してからの仕事につくチャンスに大きな差が生じる。
また、銀行の窓口業務が縮小され、オランラインで何でも済ませることができるようになった。でも、オンラインは安全性に問題があるから使いたくない人もいる。あるいは、パソコンやスマホを持っていないので、オンラインで済ませることができない人もいる。
キャッシュレス社会が進むと、極端にいえば、何も買うことのできない人が出てきてもおかしくない。
ぼくはここで、ちょっとした身近な例を挙げたにすぎない。このような問題は、新しい技術が登場する毎に、常に生じる問題だ。新しい技術についていけないと、社会生活に参加できなくなる可能性もある。それが、社会と人生に対する不安を増大させる。
技術革新のテンポが早くなるのは、仕方のないことだ。それを止めることはできない。むしろ新しい技術の開発において、ユーザーにやさしい技術造りに心がける必要がある。さらに、小さい時からの教育において、新しい技術が出てきても自分で考えてそれに適応できる能力を養っていくことも考えなければならない。
もう一つ大切なのは、社会において市民に技術格差が生まれた場合のセーフティネットを準備しておくことだ。いくら教育や技術開発において格差の発生しない対策を講じても、社会において新しい技術を拒否したり、ついていけなくなる人は必ず出てくる。そういう人たちを救済することも考えておかなければならない。
そうしない限り、社会は技術革新についていけず、技術革新は不安を増大させる種となる。
(2020年5月14日、まさお)
関連サイト:
デジタル化のいいところと悪いところ
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