気候変動にこれまでどう対応してきたのか

 地球の温暖化、気候変動が問題視されている。若者たちのFridays for Future運動で、それがより注目されるようになった。ただそれに対し、温暖化を否定する人たちもいる。

 温暖化を引き起こす原因として、二酸化炭素などの温室効果ガスが地球を覆ってしまい、太陽から地球に届いた赤外線(熱)が宇宙に放出できなくなるから地球の温暖化が起こるとされる。

 温室効果ガスには二酸化炭素のほか、メタンや亜酸化窒素などが含まれる。ただ注目度は、二酸化炭素が格段に高い。エネルギーに対する税制制度においても、環境税や炭素税などでは、主に二酸化炭素の排出に対する課税が中心になっている。

 そこで忘れられているのは、本来有害物資で石油や石炭を燃料をして燃焼させると排出される大気汚染物質だ。たとえば、粒子状物質や粉塵、一酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物などがそれに属する。

 有害物質それぞれには、環境基準値が設定されている。だがその排出を削減するための措置としては、民生部門では大気汚染物質に応じて自動車税を課税する程度くらいしかないのではないだろうか。

 また輸入された製品には関税がかかるが、石油や石炭などの燃料には関税がかからない。さらに船や飛行機の燃料も、世界中でほぼ非課税となっている。

 二酸化炭素などの温室効果ガスに対する課税は、環境税や炭素税が導入されてから。ということは、まだ30年ほどにしかならない。日本のようにまだ炭素税を導入していない国もある。石炭や石油などの化石燃料を燃焼させることで排出されるガスはこれまで長い間、ほとんど無規制で放出されてきたといってもいい。

 その結果、公害が起こり、人体に影響が現れた。でもそのコストは、化石燃料によって利益を得た者によって負担されるわけではない。健康保険や税収によって、被害を受ける一般市民が社会で連帯して負担している。

ルーマニアにあるカナダ製重水炉2基。

 それに対し、原子力発電は放射能汚染を引き起こすが、二酸化炭素や有害物資を排出しない。だから、原子力発電は温暖化問題に貢献するといわれる。でも世界全体で見ると、原子力発電が発電に占める割合はごくわずかにすぎない。

 また原子力発電では、排熱を熱供給に利用しにくいという効率の悪さがある。原子力発電では排熱で熱供給しないので、別に熱供給のために二酸化炭素が排出されるのは避けられない。この点はまったく見逃されている。

 世界では、既存の原子力発電所がすでに老朽化している。今原子力発電所を新設しても、古い発電所の代替になるだけだ。それでは、原子力発電の割合は増えない。原子力発電の新設に計画から最低20年からそれ以上かかることを考えると、原子力発電に依存しようとしても、当分の間、二酸化炭素や有害物質の排出を削減できる効果はない。この点も見逃されている。

 温暖化問題の対策として今、パリ協定が知られていると思う。その基盤になるのは、1992年にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催されたいわゆる「環境サミット」で採択された「気候変動枠組条約」だ。それが「持続可能な開発」の基盤となる。パリ協定が出てきたことですでに忘れられているが、その前に具体的なルールを規定していたのが京都議定書だった。

 京都議定書は、2020年までを対象とした。それ以降のルールがパリ協定によって規定されている。京都議定書は先進国だけに適用され、パリ協定は参加国すべてに適用される。京都議定書では、先進国に温室効果ガスの削減目標を達成する義務があった。それに対しパリ協定には、参加国各国に目標とそのための施策を提出する義務があるが、目標達成は義務ではない。

 京都議定書において定められたメカニズムは、先進国に温室効果ガスの削減を義務つけるが、自国で削減しなければならない分を途上国で再エネプロジェクトを行うなどして、他国で削減してもいいとする制度だった。要は、先進国が本来自国で排出するべきものを、途上国など他国に押し付けて削減することができたということだ。

 先に化石燃料を使っていた先進国にとって勝手な優遇制度だったといってもいい。

 これが、ぼくたちがこれまで、温暖化、気候変動問題に対応してきた過去だ。それが不十分だったとはもういえない。もう過去は変えようがない。気候変動も待ってくれない。今ぼくたちが置かれている状況をしっかり把握し、これからどうすべきなのかを考えるしかない。

(2021年4月22日、まさお)

関連記事:
第6章冒頭文

関連サイト:
日本外務省のパリ協定ページ

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