地道な市民

多世代型集合住宅

 前回、協同組合が市民による自主管理型経済の基盤になると書いた。そのうちの一つとして、協同組合による住民自治管理型の集合住宅があることを紹介した(「協同組合」)。

 協同組合をベースとした集合住宅では、住宅の管理を管理会社に委託せず、住民有志が共同で自治管理する。

 協同組合集合住宅では、住民にやさしい環境をつくるため、たとえば以下のような場や設備、機会が設けられる。

福島県とベルリンの高校生は一緒に、ベルリンにある協同組合集合住宅を視察した。そこには、最上階に住民同士の落ち合えるテラスがあった(写真で、高校生たちがいるところ)

 たとえば、住民が一緒に落ち合うことのできる集会場やテラス。住民が一緒におしゃべりできるカフェ。カフェも、住民有志によって共同運営する。自家製ケーキを交代で販売してもいい。住民によるケーキ作り教室もあってもいい。住民共同の工房。ここでは、工具やいろいろな機具が住民の間で、共用される。あるいは、手仕事の苦手な住民を手助けする。保育所。来客があった場合、借りることのできる宿泊室など。

 これらは住民が共同で運用、管理し、使用できるようにする。小さなこどもと高齢者向けに、地上階に共同トイレを設置することもできるる。

 こうした設備は、住民が集合住宅において、共生することを目的とする。

 「共生」というキーワードから、ドイツでは協同組合による集合住宅において、集合住宅を多世代化する試みも進んでいる。集合住宅を多世代化して共同で暮らすため、ドイツ政府がそれを支援するために、助成金を出す制度もある。ただし助成金は、住宅などインフラを対象としない。助成金はあくまでも、多世代化に関わるプロジェクトを実施することに限定される。

 多世代型集合住宅とは、若い世代の世帯と高齢者世帯をミックスして、集合住宅を構成するということだ。それに加えてドイツでは、ジェンダーやLGBTの問題、障害者の問題、外国人問題を考えて、集合住宅をさらに多様化させる試みも見られる。

 ジェンダー問題を考え、男女比が偏らないようにする。LGBT、障害者、外国人もミックスして、集合住宅を構成する。それとは逆に、暴力や性的暴力の被害を受けた女性だけで専用の集合住宅をつくる。

 多世代型住宅では、高齢な世帯が若い世帯のこどものベビーシッターをしたり、代理おじいちゃん・おばあちゃんになったりする。それに対して、若い世帯は高齢世帯のために、家庭内のちょっとした力仕事や買い物などを手伝い、お互いのいいところを出し合って協力し、弱いところを補い合う。

 これは、多世代型集合住宅を基盤にして、住民が共生できる住民社会をつくることでもある。多世代型集合住宅は、市民による自主管理型経済において活動する上で、基盤になるものだといってもいい。

 同時にそれは、ジェンダー対策、少数派対策、外国人対策、障害者対策、社会の高齢化対策ともなる。多世代型・多様型集合住宅では、多様に統合された住民社会ができるからだ。

 こうして市民自らが自主管理下において社会問題にも対応できれば、行政側にとり、そのための資金を削減するばかりでなく、より効率的に社会問題に対処できる効果も生まれる。

 市民を中心とした社会では、こうした試みが必要だと思う。

(2022年9月08日、まさお)

関連記事:
協同組合
共有と共用、共生の哲学
協同組合住宅とは

関連サイト:
ドイツの多世代型集合住宅のサイト(ドイツ語)

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