お父さん子のハナコ
雌ネコのハナコは、華奢でセンシブルなところがある。とても頭のいいネコだと思う。小さい時は、雄ネコのタロウによく追いかけられて、「ハアー」と威嚇することがよくあった。ハナコは力では、頑丈なタロウにかなわない。でもそうやって、タロウがやりすぎないように警告していたのではないかと思う。
まだ小さい時は、2匹で取っ組み合いをしても、むしろそのままにしておいた。それでお互いに爪を立てて痛い思いをしたほうが、爪を立ててはならないことを学ぶと思ったからだ。
普段は、タロウのほうがボスのように見える。でもどちらが、ボスなのかはよくわからなかった。というのは、わが家にある大きなキャットタワーのてっぺんにいるのが、だいたいハナコだったからだ。キャットタワーの頂上は、2メートル半くらいの高さがある。ハナコはそこでよく寝ていた。
まだ2匹が小さい時、ぼくが机に向かって仕事をしていると、まずくるのはハナコだった。最初は、腿のところまで一度に飛び上がれなかった。木によじ登るように、まっすぐに立つ脛のところに爪を立てながら腿までよじ登ってきた。ズボンを履いているからいいものの、それでも脛には爪でひっかけられた跡が残った。
その後、ぼくは椅子の上で片足だけあぐらをかいて、そこにハナコを載せていた。でもそれは、ほんの少しの間の話。ハナコはまもなく、机に飛び乗ることができるようになった。
ハナコのいるところには、まもなくすると、タロウがハナコを追っかけてやってくる。それで、2匹がノートブックの横に並んで「仕事のアシスタント」をしてくれる。ノートブックは熱を発するので、その暖かさが快適なのだと思う。
ハナコは、キャットタワーの高いところにいようが、バルコニーにいようが、ぼくが10分間の短い昼寝をするためにベッドに入ると、必ずそれを察してベッドまできた。どうしてわかるのかよくわからなかった。
そして、布団の中に入れろといってくる。右肩の辺りで布団を少し持ち上げると、クンクンと匂いを嗅いだ後に、布団の中に入ってくる。少し奥に入ると、180度回転して頭を上にする。それで、ぼくの腕を手枕にしてスヤスヤと眠りだす。でもまもなくすると、暑くなるので、布団から出すようにいってくる。
夜寝る時も、そうだった。ぼくが布団に入って寝入ったとろこで、布団の中に入れろといってくる。ただ夜は、タロウがハナコを追っかけてくる時がある。タロウはハナコがどこにいるのか探し出すが、よくわからない。いずれ、ハナコはここかとばかりに、タロウが布団の上で飛びかかったりする。その時はぼくが、タロウがハナコに直接飛びかからないように、布団の下でハナコを腕で守ってやらねばならなかった。
タロウのほうは絶対に、布団の中に入ろうとしなかった。その代わり、ぼくの足元で布団の上で横になったりする。そのためぼくは、ハナコとタロウに上と下をがっちりと固められた格好になる。寝返りも打てず、まっすぐに硬直した状態で寝なければならなかった。これは、かなりの苦痛だ。
連れ合いからは、よく我慢しているねと笑われる。ハナコがよくぼくのところにくるものだから、連れ合いの嫉妬もあるとは思うが、わが家ではハナコはお父さん子だといわれている。ハナコはやはり、雌(!)ネコなのだと思う。
不思議なことに、ハナコもタロウも決して連れ合いの布団のところには行こうとしない。連れ合いは、多分寝返りが多いからだろうといっている。でもぼくは、簡単にそうはいえないのではないかと思っている。でもどうしてなのかは、よくかわらない。
小さい時は、ハナコの方がひ弱な感じがした。からだもタロウに比べて、細かった。ドライフードしか食べないので、何とかウェットフードも食べさせようとした。
ドライフードは太りやすいのと、水分をしっかり摂らせないと、後で腎臓の悪くなるネコが多いと聞いていたからだ。ウェットフードを食べさせる第一段階として、牛のひき肉を生で食べさせたり、鳥のささ身をゆでて食べさせようとしたりした。でも、うまくいかなかった。牛は後でアレルギーがあることがわかったので、親として逆にアレルギーを促進していたことになる。鶏肉は食べても、すぐに吐き出した。
結局、ウェットフードを食べさせるのは諦める。むしろ、ハナコには悪いことをしたと後悔している。
ハナコは小さい時から目やにが酷く、いろいろなことを試してみたが、なかなか治らなかった。それが、ぼくたちの悩みの種だった。タロウのほうがむしろ、脚の骨折以外はあまり手がかからなかったように思う。
以前書いたが、結局目やにの原因が、牛と魚に対するアレルギー反応だとわかった。餌を高品質なものに換えることで、目やにの問題はほとんど解決した。
餌を換えてからは、ハナコの華奢なからだも日々に頑丈な感じになった。ぼくたちは、ホッと安心した。
2020年6月01日、まさお
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