何でもない写真が示す日独の違い
連れ合いが、自分で撮った写真を一枚日本の友人に送った。

ベルリンではここのところ、連日、30度前後の暑い日が続いている。しかしベルリンの都市鉄道Sバーンの車内には、クーラーがない。写真で車内右側の窓に見えるように、上部の小さな窓が開くだけだ。窓が小さい上、開けることのできる窓の数も少ない。それは、安全のためだ。
こういう状況なので暑い日になると、車内はサウナのようにムーっとするくらいに暑い。蒸し風呂だ。
連れ合いは日本の友人に、こんなに暑いのにベルリンの電車にはクーラーもないのよといいたかったらしい。
最新の車両には、クーラーがあるようになった。だが、まだまだ少数。これだけ連日暑くなっても、電車にクーラーを装備しないのを、ぼくは非人道的だと思っている。しかし全車両にクーラーが入るようになるまでには、まだまだ時間がかかると思う。
写真は、ベルリンのSバーンの車内の日常の様子を示している。平日の午後に撮ったものだった。ベルリンではすでに、学校が夏休み。たくさんの人がこどもと一緒に休暇に出てしまっている。ベルリンでも一番混み合う区間で撮った写真だが、車内はガラガラだ。
車内では、黒い犬がのんびりと横たわっている。怖がっている様子もない。自転車も堂々と、車内に立てかけてある。自転車の持ち込みは有料なので、自転車用のチケットを持っていないと、無賃乗車となるので注意が必要だ。
ぼくは写真に、車椅子に座っている人と乳母車も入っていればもっといいなあと思った。実際、車内で黄色い線で囲まれた写真右側のエリアは、車椅子優先エリアである。かといって、そこをはじめから空けておく必要はない。車椅子に乗った人がくれば、譲ればいい。
車椅子、乳母車、妊婦、高齢者には、車内において優先権がある。
写真では、小さなこどもが椅子に座って、お父さんと思われる男性と話している様子も写っている。こどもは多分、娘かな。娘と父に、お母さんは連れ添っていない。父親と小さな子供の二人だけで一緒に電車に乗っている姿は、日本で見かけることがあるだろうか。
こういう光景はベルリンだけではなく、ドイツでは普通なんだけどなあ。
連れ合いの友人はこの写真を見て、「何とおおらかな光景なのか」とびっくりしたという。しかし写真は、ドイツの首都ベルリンにおける日常の一コマを示しているにすぎない。しかしその光景には、日本の首都東京ではまったく信じられないおおらかさがあるのだ。
何でもない写真のように見える。しかしよく見ると、ベルリンと東京の日常の差があまりに大きいことがわかる。ぼくには、ベルリンで日常よく見る当たり前の写真。しかし日本では、こんな光景は見ることができない。
もう一つ日本と異なるのは、ベルリンの電車の車内につり革がないことだ。つり革がないのは、車内があまり混まないからでもある。ただここ数年来観光客も増えて、車内が混み出しているのも事実。混んでいる時には、からだを支えるために手でつかむところを探して移動しなければならない。
最新の車両ではようやく、つり革がついているようになった。でもつり革につかまる習慣がないからだろうか。つり革を利用している人は、あまり見かけない。
何でもないベルリンの日常を示す写真。それがこれほど、日独の日常の違いを現しているとは。ぼく自身も気づかなかった。思っても見なかった。
2023年7月17日、まさお
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関連サイト:
ベルリンのSバーン公式サイト(ドイツ語)