エネルギー選択宣言ブログ

住民参加にも統一ルールを

 これまで、風力発電施設や送電網の建設に対して住民が反対していることについて報告してきました。

 反対する根拠には、その場その場でいろいろな背景があると思います。それを一般化するのは、できるだけ避けたいと思います。

 ただ、こうはいえると思います。

 再エネに転換するのには、基本的に反対していない。でも、自分の生活環境が風力発電や送電によって影響を受けるのは困る。というのが、住民反対の多くのケースで見られる傾向だと。

 このまま反対が続くようでは、エネルギー供給をすべて再生可能エネルギーで行うまで、かなりの時間がかかる危険があります。さらに、再エネ化が難しくなる可能性もあります。再エネ化を実現するには、風力発電をさらに増やすとともに、発電された電力を全国に満遍なく送電するため、送電網も整備しなければなりません。

 住民の反対を緩和する一つの手段が、ウィンウィン状態をつくることです。

 ドイツでは送電網整備において、住民の反対を緩和するため、高架線に代わって地下ケーブルを敷設することが進められています。ただ地下ケーブルでは建設費が高くなるほか、何かあった時のメンテナンスが難しいという問題があります。

 この負担は最終的に、電気料金の高騰を招きます。それでは、ウィンウィン状態になりません。

 送電網整備では、電力供給システムの構造をこれまでのように高圧線に依存でず、発電拠点の小型化、分散化に伴い、低中圧線中心の構造に切り替えることも必要です。そうすれば、生活環境への影響が小さいので、住民の反対が少なくなる可能性があります。

 さらにドイツでは、送電線建設に地元住民に資本参加させ、それに伴う利益を住民に分配しようという試みもあります。でも送電線が電力大手によって建設される限り、住民はそれには参加しません。

 住民が送電網整備に協力しやすくするには、送電線整備を大手電力がするのではなく、住民が自らのアイディアを出して参加できるようにする送電網の市民化も必要になります。

 風力発電では、事態がもっと深刻です。景観や騒音、影など実際の住民への影響のほか、野鳥の被害に反対している住民も多いからです。市民が共同で設置する風力発電施設も、反対対象になります。

 風力発電に対する住民の反対を緩和するため、ドイツでは影響を受ける住民に「住民分担金」を支払うというアイディアも出ています。ただぼく自身は、これにはあまり賛成できません。

 それでは、風力発電への住民参加にはならないからです。

 ぼくは、地元住民が個人あるいは共同で風力発電施設の建設に出資できるようにして、住民参加を増やすほうがいいと思っています。

 そのほうが、利益の分配がはっきりします。

 資金を持っていない人に対しては、ソーシャル銀行から少額の低金利融資を受けることのできる可能性を設けます。そのほうが、平等性と参加意識が生まれます。

 こうした住民参加を促進するため、住民参加するための全国で統一されたルールをつくることが必要だと思います。そこには、利益分配についても統一ルールが必要です。問題が起こった場合のために、仲介する市民組織も設置します。

 それによって、住民参加意識ばかりでなく、公平性も促進します。

 自治体が、町ぐるみで地元の再エネ化を進めることも大切です。そのため自治体が、地元の再エネ化構想を立案するため、対話によって住民のアイディアを取り入れます。それは、住民全体で再エネ化を進めるのだとイメージするとともに、意思表示することにもなります。

 最初の段階から、住民との対話と参加を促進して市民化する。それも、キーワードだと思います。

2020年2月16日、まさお

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