鉱物資源をフェアトレード化する

 カーボンニュートラルや脱炭素社会、持続可能な開発ということばをよく聞くようになりました。それを実現するためには、再生可能エネルギーや電気自動車が必要不可欠です。

 ただ再エネや電気自動車さえ普及すれば、それだけで脱炭素社会が実現され、社会は持続可能になるのでしょうか。そうは思いません。

 再エネで発電するソーラーパネルや風力発電施設、蓄電池、電気自動車を製造するには、銅やレアメタル、レアアースなど鉱物資源が必要です。レアメタルやレアアースを採取する場合、放射性廃棄物も排出されます。

 それを理由に、再エネはダメ、電気自動車もダメ、蓄電池を製造するのにたくさんのエネルギーを消費するからダメだとよくいわれます。さらにこれから、製鉄業など重工業をグリーン化するために、水素が必要になります。水素を製造するにも、たくさんの電気を使います。その電気も、再エネで発電しなければなりません。

 カーボンユートラルを目指すには、電力需要が増えると同時に、鉱物資源に対する需要も拡大することを意味します。でも、鉱物資源は有限です。有限な鉱物資源に依存する限り、持続可能とはいえません。

 鉱物資源を採掘するのは、発展途上国です。鉱物資源採掘現場では、工業国のいいなりになって、過酷な労働条件と安い賃金で働いている労働者がたくさんいることも忘れてはなりません。工業国による搾取です。

 だからといって、再エネ化は止めたほうがいいのでしょうか。ただ現在、ぼくたちが脱炭素社会をつくって社会を持続可能にするには、再エネの利用を避けて通ることができません。再エネの利用は諦めることができません。

 ぼくたちはまた、日常生活において液晶テレビやタブレットコンピュータ、スマートフォンなどを使っています。これらの家電製品は、もうなくてはならないものになりました。これらの家電製品にも、銅やレアメタル、レアアースなどをはじめとしてたくさんの鉱物資源が使われています。

 たとえばスマホやパソコンに、リチウムイオン電池が使われているのはよく知られています。リチウムは鉱物資源の一つです。ぼくたちの生活はもう、鉱物資源なくしては成り立たなくなっています。

 つまり、鉱物資源を持続可能に使わないと、再エネ化や電気自動車化しただけでは、社会は持続可能にはなりません。今後技術開発によって、有限な鉱物資源の代替となる持続可能な物質を製造することも考えなければなりません。

 でも、それまで待てません。今はまず、鉱物資源をより効率よく使うことを考えます。そのために、鉱物資源をリサイクルするシステムを構築します。さらに鉱物資源の需要を減らすことも考えなければなりません。そのためには、省エネして電力需要を減らします。

 もう一つ大切なのは、木やコーヒーなどの食糧品と同じように、鉱物資源の取引に国際的なフェアトレード基準を設けることです。それによって、工業国による搾取を制御して、途上国において格安で過酷な条件で鉱物資源が採掘されるのを防ぎます。そうして、鉱物資源の採掘を人にやさしく、持続可能にします。

ぼくの使っているフェアフォーンは第二世代。すでに少し大きい第三世代のフェアフォーンもある

 たとえばぼくは、「フェアフォーン」というスマートフォンを使っています。これは、フェアトレード基準に基づいて採掘された鉱物資源を使うほか、部品をモジュール化して、部品交換が簡単にできるように製造されたスマートフォンです。そうして、できるだけ長くスマホを使い続けます。

 フェアフォーンがはじめたことが、家電や再エネ関連製品、電気自動車、工業機械など鉱物資源を使うすべてのものに拡がるべきだと思います。

2021年8月29日、まさお

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関連サイト:
Minerals for Climate Action: The Mineral Intensity of the Clean Energy Transition(世界銀行)

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