気候デモには原発推進派も

 ぼくには常々、一つ気になっていることがあります。それは、気候変動問題で早急な対策を求める若者たちが、はっきりと原発に反対していないことです。ドイツのFridays for Futureの中心人物の一人リーザ・ノイバウアーさんに聞くと、確かに原発には反対している、二酸化炭素を分離貯留するCCS技術にも反対しているという返事が返ってきます。

 しかし気候変動問題に比べると、原発にはエネルギッシュに反対しません。

 福島県高校生がベルリンの高校(ギムナジウム)で体験授業をした時、ぼくはFriadays for Futureに、福島県高校生と交流しませんかとオファーしました。しかし、まったく関心を示してくれませんでした。原発問題には関心がないという感じでした。

 核兵器禁止条約の基盤になったICANになると、もっとはっきりしています。核兵器禁止条約を広めるためには、原発推進でも核兵器に反対する人たちであれば、拒否しません。核兵器禁止条約支持であれば、その他はどうでもよく、できるだけ広く核兵器禁止条約支持者を集めたいということです。

 運動を広げるという意味で、理解できないこともありません。しかし、「でも」といわざるを得ません。

 原発が核兵器製造の基盤になっているのは、明らかです。技術的に見ても、原子炉は元々、核兵器製造を目的にできたものでした。その点を忘れてはなりません。

 気候保護問題でも、原発が気候保護に貢献できないのは明らかです。それについてぼくは、「原子力ルネッサンスの幻想と脱原発へのビジョン」で、詳しく論証しました。

 ぼくは、気候保護においても、核兵器禁止においても、原発を認めるべきではないと思っています。気候保護においてであろうが、核兵器禁止においてであろうが、その立場をはっきりと表明すべきです。

 ベルリンでは2021年9月24日、ドイツの国政総選挙である連邦議会選挙の投票を前に、3万5000人の参加する大きな気候デモがありました。そこには、原発推進派も集まり、気候変動には原発を維持、拡大するのが一番だとして、気候保護支持者と一緒にデモをしていました。原発のほうが、再エネによってグリーン化するよりも、社会と環境にやさしく、安上がりだと主張します。

気候デモで見た原発推進のロゴボード。ロゴには、「気候変動のために原発を」と書かれている。原発反対ロゴを真似ているのは明らか。2021年9月24日に気候デモ集会の行われた連邦議会議事堂前で撮影。

 しかし気候デモの主催者たちは、それを黙認していました。原発に反対する環境団体も気候デモに参加していましたが、黙認していました。

 もちろん、デモに参加するのは自由です。デモから排除する必要はありません。しかし気候デモは、原発にも反対しているというメッセージをはっきりと示すべきだったと思います。

 原発によって排出される放射性廃棄物は、これからの世代の問題となり、最終的に後世世代の負担になります。その意味で、若者たちには原発の問題を無視してほしくありません。原発の問題は、気候保護と同じように、世代間の問題でもあります。原発は気候変動と同様、自分たちの将来に係る重大な問題であることを認識してほしいと思います。

 なぜ、気候保護においても、核兵器禁止においても、原発に対してはっきりとした立場をとるべきなのか。その論拠はすでに書きました。ぼくが心配するのは、原発推進派を黙認していると、原発推進派が気候変動問題でも、核兵器禁止問題でも拡大してくる心配があるからです。

「鉄は熱いうち打て」といいます。時期を逃すと、後で取り返しがつかないことになりかねません。そのためには、早いうちに手を打っておかなければなりません。それは、ドイツのコロ対策反対デモを見てもわかります。コロナ対策反対デモでは、初期段階で極右派と距離を置かなかったことで、コロナ反対派で極右派が勢力を拡大、極右色が強くなってしまいました。

 今コロナ対策反対デモは、警官隊と激しく衝突するなど、過激になっています。その傾向が、デモに参加する一般市民にも広がっています。

 たとえばドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」は、コロナウイルスは無害としてコロナ対策に反対するほか、原発も盲目的に支持しています。ただ気候変動はないという立場なので、気候デモを支援してくるきざしはありません。その点、コロナ対策反対デモとは異なります。

 しかしどこでどういう勢力が、気候デモに浸透してくるかわかりません。自分たちの主張を通していくには、それに関連する反原発という立場をよりはっきりさせておくのは、運動を健全に、持続的に続ける意味で大切だと思います。

2021年9月26日、まさお

関連記事:
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関連サイト:
ドイツのFridays for Future(ドイツ語)
ドイツのICAN(ドイツ語)

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