さよなら減思力

住民参加住宅を考える(1)

 ベルリンにあるわが家のある集合住宅は、20世紀はじめ頃に建てられた建物です。戦争で屋根が破壊されましたが、補強して住宅として使われてきたと聞いています。建物は80年代中頃にリフォームされ、4階と5階(日本でいえば、5階と6階)が増築されました。

 わが家は、その5階にあります。

 友人の紹介で偶然見つけたわが家ですが、もう20年以上暮らしています。

 その間、2009年から2010年にかけて大きな転機がきます。この集合住宅を所有する大家が破産宣告したのです。住民みんなに、これからどうなるのかと大きな不安が広がりました。

 住民の一人が破産管財人とコンタクトします。建物の新しい買い主を探していること、さらに破産した大家は建物しか所有しておらず、土地はベルリン市のもので、その土地賃貸契約が2054年まで有効であることがわかりました。

 その時、建物だけでいいなら、住民みんなで建物を買い上げることはできないかと思いつきました。

 ベルリンでは、市民が建物を共同で買い上げ、住民自治をベースに集合住宅を運用するケースが増えてきていたからです。集合住宅を住民が共同で保有して自分たちで管理すれば、不動産市場の動きに左右されず、追い出される心配もなく、安定した生活を送ることができます。

 一人では買えなくても、共同でなら高価なものも買うことができるのではないか。そう思いました。

 早速、住民の何人かに声をかけてみます。

 何世帯かは、たいへん興味を示してくれました。しかし、多くの住民は自分たちでお金を出すことにとても懐疑的でした。

 でも、住民で一緒に話し合うため、住民集会を開くことができました。住宅による住宅自治化を達成した市民を訪ねて、そのノウハウを聞いてきたこともあります。住民住宅プロジェクトにアドバイスするベルリン市の相談サービスも受けました。

 その間、21世帯ある建物の評価額が100万ユーロ余り(1億5000万円くらい)であることがわかります。住民の中に建築家がいたので、建物を最低限リフォースするのにどれくらいかかるかも、概算で想定してもらいました。

 この時考えたのは、窓と水道配管を新しくするだけでした。

 可能性を調べていく過程で、いろいろことがわかります。省エネハウス化してリフォームすれば、政府系金融機関から低利で融資を受けることができます。こうした住民プロジェクトなど社会性のあるプロジェクトに対して、低利で融資する専門銀行があることもわかりました。

 ソーシャルビジネスの専門銀行です。

 当時平米当たりの家賃は、5ユーロ前後。ぼくたちは住民の建築家を含めて住民有志で相談し、最低限のリフォームと銀行融資によるローンの返済によって、かなりの概算ですが、家賃を30%くらい、最高でも40%引き上げる必要があるだろうと想定していました。

 建物を買い取って共同管理する形態として、協同組合がいいのではないかとも思っていました。

 ぼくは、将来家賃がうなぎのぼりに上がることを考えると、住民にとってはかなり有利なのではないかと思っていました。
 
 それを、次の住民集会で伝えてみます。家賃が上がるのは、とても微妙で難しいテーマなのです。できるだけ慎重になりました(続く)。

(2020年1月10日、まさお)

関連記事:
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関連サイト:ベルリン市の住民参加型多世代型住宅支援機関(Netzwerkagentur)サイト(ドイツ語)

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