空気感染にも要注意!

 日本では今、休業要請を解除した後に東京を中心に新型コロナの感染者が拡大しています。

 ドイツでも、ロックダウン後それに伴う制限が段階的に緩和されてきました。しかし、制限がすべて解除されたわけではありません。制限は各州によって異なりますが、依然として最低限の制限が続いています。

 たとえば公共交通に乗る時や、お店に入る時にはマスクの着用が義務付けられます。ベルリンでは、バスや電車でマスクを着用していないのが見つかると、最低50ユーロ(約6000円)の罰金が課せられます。

 飲食業では、営業を再開しています。でも、密封された室内で夜遅くまでたくさんの人が集まるバーやクラブは、まだ営業できません。それは、第1波の感染源がこうした夜の繁華街だったからです。飲食業で営業できるのは、レストランとカフェ。それも、当初は夜22時までしか営業できませんでした。

 今でこそレストランやカフェでも、テーブルは通常通りに並んでいるところが多くなりました。でも営業再開当初は、テーブルの間に十分な間隔を取ることが義務付けられました。

 ドイツでは、レストランやカフェが歩道にテーブルを出して営業できます。室内のほうか感染の危険が高いので、お客さんのほとんどが室内ではなく、屋外のテーブルに座っているのが目立ちます。

 ビアガーデンも、たくさんあります。ビアガーデンでは屋外で飲み食いするので、空気感染のリスクはそれほど高くありません。

ビアガーデンでも、営業再開当初はテーブルの間がこんなにあいていた

 映画館もようやく、営業を再開できるようになりました。でも館内では、間隔をあけて座ることが義務付けられます。劇場も一部が再開しています(ただし、もう夏休みに入ったところが多い)。でも座席の多くが取り外され、公演毎の入場者数が制限されています。美術館や博物館でも、同じように入場者数を制限します。そのため、入場チケットは事前にオンランでしか購入できません。

 コンサートホールやオペラハウスでは、室内での公演を再開しているところはまだごく少数です(こちらも、もう夏休みに入ったところが多い)。オープンエアでの公演が一部行われました。その場合も、演奏家と観客はそれぞれが間隔をあけて座っていました。

 ドイツで依然としてこうした措置を講じている一つの要因は、エアロゾルによる空気感染をできるだけ避けるためだからだと見られます。ドイツでは結構早い段階から、エアロゾルによる空気感染の問題が指摘されてきました。

 WHOは世界の専門家からの指摘で、最近にやってようやく感染経路として空気感染を認めました。でもドイツでは、かなり早くから専門家の助言を得て空気感染に敏感に対応しました。

 学校の休校を解除することについても、とても慎重でした。授業は、ソーシャルディスタンを守ることのできる高学年から再開されます。教室に入る生徒数も制限したので、最初はクラスを分けて授業が行われました。小学生など小さなこどもたちでは、校内でソーシャルディタンスを保つのは難しいと見られたからです。

 低学年の授業を再開するまでには、こどもの感染能力についていくつも調査が行われました。こどもから感染する可能性が少ないことを確認した上で(これについてはまだ確定していないが)、ようやく低学年の授業も制限付きで再開されます。

 また空気感染を防止するため、劇場や映画館、博物館、学校など密封される空間では、定期的に換気することも義務付けられます。

 職場への復帰についても、かなり慎重です。ドイツでは依然として、ホームオフィス(在宅勤務)している人が結構います。それは、出勤を求めて感染が拡大するほうが、企業への経済的な打撃が大きいからです。

 日本の企業のように大部屋でたくさんの人が仕事をするところでは、空気感染の危険が高いのは当然です。それで出勤を求めては、感染のリスクが高まります。

 新型コロナにどう対応するかは、政治の問題です。政治が判断して決定しなければなりません。でもドイツでは、政治が決定する場合、科学的なバックブラウンドをしっかり把握してから、次の措置を決定しているように見えます。

 パンデミックのような事態では、政治と科学の連携がとても大切です。ドイツでは、それがうまく機能しているように思います。

 それがドイツで、一部で現在クラスターが発生しているものの、これといった大きな感染の拡大が見られない要因ではないかと思います。

(2020年7月17日、まさお)

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関連サイト:
ロベルト・コッホ研究所の新型コロナ統計ダッシュボード

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