学校の授業再開は安全か

 ドイツでは、州毎に夏休みをずらして取ります。夏休みが早く終わる州では、8月はじめの週か、その翌週から学校の授業が再開されます。

 今週はじめに授業を再開したドイツ北東部のメクレムブルク・フォアポムメルン州では、再開して1週間も経たないうちに、2校で陽性者が検出されました。その2校は、すでに休校しています。

 夏休み前、ドイツの学校ではできるだけ早く授業を平常化するため、いろいろ試行錯誤が続けられてきました。しかし夏休み前に、平常授業をしたところはほとんどありません。ほとんどの学校で、クラスを半分に分け(一クラス10人余り)、シフト授業をするなどして、かろうじて授業が行われていました。

 そのため、生徒が学校にいくのは週に数回と制限されていました。

 ただ生徒たちの学力を維持、促進させるほか、父兄が仕事を続けていけるようにするには、できる早く平常授業を再開することが求められます。

 そのため、学校でのマスクの着用を検討するほか、校内で他のクラスの生徒との交流を避けるなどして、できるだけ学校全体での濃厚接触を避ける対策が検討され、それを実行に移す準備が行われてきました。

 しかしそれでも、コロナ禍において安全に授業を再開できるかどうかの保証はありません。

トラムの前に集まった小さな生徒たち

 ドイツの多くの学校で授業が再開されるのを前に、ドイツ・ウイルス学会の新型コロナ臨時委員会は2020年8月6日、学校での授業再開において徹底した予防対策をするよう求める声明を発表しました。

 声明は、ドイツを代表するウイルス学者10名が署名しています。

 これまでの状況から、感染したこどもの症状が軽く、入院するケースも少ないことがわかっています。とはいえ、こどもから感染して社会全体に感染が拡大するのかしないのか、これまでの状況からだけでははっきりと判断できません。

 こどもの感染力に関しては、国外ばかりでなく、ドイツ国内においても科学的な調査が行われ、分析結果が発表されています。ただそうした調査のうち、ロックダウン中に行われた調査には意味がありません。こどもたちが家庭から出ることの少ない状態で行われた調査では、こどもが感染していないので、こどもの感染力を確認できません。

 その意味で、学校での授業がまだ本格的にはじまっていない中で行われた調査結果には疑問が持たれます。そうしたことから学会の声明は、これまでの科学的な調査結果に基づいてだけ対策を講じることに注意するように警告しています。

 ドイツ・ウイルス学会の声明は授業再開に向け、学校での予防策として以下を求めています。

・一クラスの人数をできるだけ少なくする
・校内では、できるだけ同じ生徒同士で、クラス単位などグループに分かれて行動する
・授業はクラスを分割し、できるだけ時間をシフトして行い、(すべての生徒が授業を受けることができうように)週数回とする
・学校での授業と在宅授業をミックスして行う
・各教室をできるだけ頻繁に換気する
・生徒たちに衛生管理上必要なことをじかに教えて、周知する
・校内では、授業中も含めマスクを着用する

 また学校での感染では、個々の感染を追跡することに全力をつくすよりも、クラスター対策を徹底し、クラス毎などクラスターの隔離を徹底するほうが効果的だとしています。その場合、学校全体の検査は必要ないともしています。

 クラスター対策を徹底すれば、隔離期間もこれまでのように2週間ではなく、それよりも短い期間でも大丈夫だろうとも提案しています。

(2020年8月07日、まさお)

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関連サイト:
ドイツ・ウイルス学会サイト関連ページ(ドイツ語)

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