新型コロナの検査、日独比較

 新型コロナの検査といえば、PCR検査です。もう耳が痛くなるほど、聞かされてきたのではないかと思います。

 PCR検査では、のどや鼻の奥から綿棒で鼻咽頭ぬぐい液を採取します。その検体を検査機関に持っていってRNAを増幅させ、新型コロナウイルスの遺伝子配列があるかどうかを検出します。

 ただいろいろ試薬が必要など、資格のある検査技師が必要です。検査結果自体は、数時間で出ます。でも検体の搬送などロジスティックに時間がかかるので、実施に検査結果がでるまでに2、3日かかります。

 新型コロナの感染が増えた時、日本ではPCR検査の精度に疑問が出ました。そのため、検査能力を増やすか、増やさないかで慎重な意見が出ました。そのために、初動が遅れたといってもいいと思います。

 それに対し、ドイツでは早くから積極的にPCR検査能力を拡大し、次から次に検査を実施しました。その初動の取り組みの速さが、ドイツが他のヨーロッパ諸国に比べて感染者数が少なく、死亡者も少なかった大きな要因だとされています。

 それに対して今、抗原(定性)検査が普及しています。

 抗原検査では、新型コロナウイルスに対する抗体を使って抗原(タンパク質)を見つけます。抗原検査の利点は、特別な試薬や検査機器が必要ないこと。その場で、15分程度で検査結果が得られます。ドイツでは、検査結果がその場ですぐに出るので、「迅速検査」ともいわれます。

 日本では、抗原検査が2020年夏から導入されています。たとえば、帰国者(外国人はまだ入国できないので入国者ではない)に対して空港で抗原検査が実施されています。

 それに対してドイツでは、まだ抗原検査がほとんど実施されていません。ドイツは、PCR検査を拡大した分、それに固執してしまっているようにも思われます。

 でもドイツでは、抗原検査の精度を引き上げ、偽陰性の確率を少なくして、抗原検査を導入することを考えています。さらに、抗原検査をより有効に利用するため、どういうところで導入するのが効率的なのか、それを事前に十分検討してきました。現在のところはまず、老人ホームや障害者施設に導入して、その職員と訪問者を対象に抗原検査を行う予定です。

 PCR検査の時と同様に、日本では抗原検査の精度が悪いことが問題だとして指摘されています。抗原検査の精度がPCR検査よりも悪いのは、よくわかっているはずです。今更何をといいたくなります。なぜ、それを今問題にするのかよくわかりません。

 PCR検査にしろ、抗原検査にしろ、精度が重要なのはその通りです。でも検査に100%の精度を期待できない以上、精度に問題があっても、検査をどう効率よく使うのか。あるいは、偽陰性を防ぐために次にどうすべか。そういうことを考えたほうが賢明に思います。

 それにも関わらず、精度がよくないからと検査自体に疑問を呈するのはなぜなのか。ぼくにはよくわかりません。

 重要なのは、感染者と感染ルートを追跡して、感染を拡大させないことです。そのために、今ある手段を有効に使うことを考えます。検査の精度が一番大切なわけではありません。精度に問題があっても、それをどううまく使っていくのか。それを考えるために頭脳があります。

 日本では、それを忘れていないでしょうか。

(2020年10月10日、まさお)

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関連サイト:
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