酸化ウランの正体は、長い間知られていなかった
終戦を巡る原爆の謎
ドイツの潜水艦U234号にあった酸化ウランについては、長い間その詳細が知られていませんでした。押収した米国海軍の調書にも、「酸化ウラン」としか記載されていません。
米国側は、押収したものの正体を意図的に明かさなかったのか。あるいは、それは重要ではなかったのか。真相はわかりません。しかし米国に残る資料には、どこにもその詳細がありません。
問題の酸化ウランの真相は、前回書いたように、ドイツに保管されていた資料から判明しました。発注者の昭和通商会社ベルリン支店の発注書、受注したローゲス社の発注受書と請求書から、U234号に搭載されていた酸化ウランが、誰が発注し、誰が納入したものなのか、さらにその純度などの詳細がわかりました。
これらの文書を見つけたのは、『ヒトラーの爆弾(Hitlers Bombe)、ドイツ核実験の秘史』の著者で、歴史家のライナー・カールシュさんでした。ライナーさんは2002年2月、ドイツ公文書館(Bundesarchiv)で文書を見つけています。
ライナーさんはこの時、ナチス・ドイツが原爆を製造するために必要なイエローケーキを入手した経路を調べる過程で、昭和通商会社に関係する文書を見つけたのではないかと思います。ドイツ軍も昭和通商会社も同じ会社から、イエローケーキを手に入れています。ただライナーさんは、昭和通商会社の発注したイエローケーキが、米国によってドイツの潜水艦U234号から押収された酸化ウランであることに気づいていませんでした。
ぼくは2020年はじめ、ぼくの友人で、ドイツで日本の原爆開発について研究している日本人研究者経由で、ライナーさんが当時見つけた文書を入手することができました。それで、昭和通商会社の発注したイエローケーキと、米国でドイツの潜水艦U234号から押収された酸化ウランのカーゴ番号が一致していることに気づきます。
ぼくはまず、米国で押収された酸化ウランの正体をインターネット上でドイツ語の記事として公表しました。日本語ではその後に、以下の電子書籍で明らかにしました。
ライナーさんにそのことを知らせて感謝すると、「まったく見逃していた。ありがとう」と、ぼくのほうが逆に感謝されました。その後、ぼくのドイツ語の記事を見つけた米国人トムさんからも、とてもすばらしい発見だというメールが届きます。トムさんは、その文書がほしいともいってきました。
トムさんは、原爆開発の目的でマンハッタン計画の一環として設立された米国のロスアラモス国立研究所の元研究員。定年退職後、戦前、戦中のドイツの原爆開発について調べています。トムさんの調査は徹底していて、集めた資料は計りしれません。
トムさんとは、その後もいろいろ情報を交換しており、そのトムさんがこれからの記事において、とても重要な情報源になっています。
この辺のことは、ぼくの電子書籍『きみたちには、起こってしまったことに責任はない でもそれが、もう繰り返されないことには責任があるからね』に、もっと詳しく書いています。関心のある方は、のぞいてみてください(以下に、リンクあり)。(つづく)
(2021年7月16日、まさお)
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きみたちには、起こってしまったことに責任はない でもそれが、もう繰り返されないことには責任があるからね(書籍案内)
関連サイト:
きみたちには、起こってしまったことに責任はない でもそれが、もう繰り返されないことには責任があるからね(電子書籍、立ち読みできます)
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