これまでの発電方法は省エネが苦手

 石炭火力発電や原子力発電の大型発電所では、発電電力量を柔軟に調整できない。原子力発電の場合、100%稼働が原則。石炭火力発電でも、石炭がすぐにフルに燃えだすわけではない。燃えている石炭をすぐに消すこともできない。そのため、発電を開始するのにも、停止するまでにも時間がかかる。

 電力需要の変化が早いと、石炭火力発電と原子力発電は、その変化に柔軟に対応できない。

 だから、原子力発電と石炭火力発電は、ベースロード電源としてベースロード電力を発電するために使われる。ベースロード電力とは、昼間と夜間に関係なく、常に最低限必要とされる電力で、常に一定の量の電力が発電されている電力のことだ。

 電力需要の少なくなる夜間には、ベースロード電力が余り気味になることもある。その場合、電気料金を安くしてできるだけ多く消費してもらう。あるいは揚水発電所で余剰電力を使って水をくみ上げ、くみ上げた高いところに水を貯蔵する。必要に応じ水を下に流し、水力発電する。

 ベースロード電力の割合が多いと、必要以上に電力を使わなければならない。その典型的な例がフランスだ。

 フランスでは、原子力発電の割合が70%を超える。つまり、ベースロード電力の割合がとてつもなく高い。その結果、フランスでは何にでもできるだけたくさんの電力を使わなければならない。フランスではこれまで、暖房にも電気ストーブが奨励されてきた。その結果、冬寒くなると、電力不足が深刻になる。寒波で、暖房の使用量が増える。でも電力システムに柔軟性がないので、十分に暖房できるだけの電力が不足する。だから寒波になると、フランスはドイツから電力を輸入している。

 本来、本気で省エネしたければ、このベースロード電力を減らさないと、大きな省エネ効果はない。しかし原子力発電と石炭火力発電が発電においてかなりの割合を占めていると、その分は省エネできない。電力は使うしかない。いくらピーク電力で省エネしても、省エネ効果は限定的だ。

 現在の電気料金体系は、電力消費量が多ければ多いほど安くなる料金体系だ。これは、大型発電所で一度に多量の電力を発電するから、できるだけ電力を多く消費してもらいたいからだ。つまり、省エネされては困る。だから省エネしないで、できるだけ電力を使うように仕向ける料金体系となっている。

 人類はこれまで、有限資源を使って豊かさを享受してきた。オイルピークがいつくるかどうかはっきりしない。でも、有限資源は有限だ。いずれ有限資源が枯渇するのは間違いない。

 でも人類はこれまで、できるだけたくさんの有限資源を使って豊かになることしか考えてこなかった。有限資源を十分に使えるのは、資金力のある一部の工業国にすぎない。豊かな工業国はより豊かになり、有限資源の使えない途上国との格差が拡大する。

 これは、有限資源が買わないと使えないからだ。だから、一部の人にしか使えない。

 この現実を変えるためには、有限資源の化石燃料とウラン(原子力)を利用することから脱皮しなければならない。

 この格差問題を解消する一つのポイントになるのが、再生可能エネルギーだ。再生可能エネルギーには、誰にも使う権利がある。太陽の光も風も、手に入れるにために買う必要もない。誰にでも手に入る。

 これが、有限な化石燃料と無限な再生可能エネルギーの根本的な違いだ。それが今後、社会を変える大きなインパクトになるはずだ。

(2020年12月17日、まさお)

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