経済価値を発電地に残す

 これまでの電力システムは、火力発電所や原子力発電所の大型発電所を発電拠点として集中的に発電する中央型集中式構造だった。それでは、発電された電気のほとんどは地元では消費されない。燃料、人件費など経費をかけて発電された電気は地元を離れるだけ。地元には、発電によって電気に付加された価値は残らない。

 大型設備による発電構造では、発電地に経済価値が残らず、経済価値は電気を消費する大都市などに集中する。そこで、大きな利益が得られる。こうした発電構造は、発電地と消費地の間に不均衡をもたらす。

 大型発電所のある地域は、電気が送電されていくのを無力に見ているしかない。事故が起こっても、被害を被るのは地元で、消費地は知らん顔をしておれる。これが、これまでの発電構造の現実だ。

 こうした不均衡の生まれる原因は、中央集中型の発電構造にある。でそれにも関わらず、日本ではその構造を改革しない。むしろその構造を維持、拡大するため、発電地域に交付金を支給するなどして、中央から財政援助する。そうやって安定供給を維持してきた。

 その結果、大型設備のある地域は政治的にも、経済的にも自立性を失う。国である中央に依存しなければならなくなる。

 これが、日本の電力システムの特徴だ。

ドイツ南西部にあるライン・フンスリュック郡では、多くの森林が自治体所有なので、風車が設置される毎にその土地の賃貸料が自治体に入る。

 それに対してドイツでは、自治体に交付金を給付する制度はない。ドイツの憲法に相当する基本法第28条第2項によると、自治体が自治体の行うすべてのことを自己責任で規制し、自治体の自立性が保証される。財政の独立性も保証される。自治体は、中央のいうままにお金を使う必要もない。

 自治体の自立性を確保するには、地元にお金の落ちる経済体系が必要だ。都市と地方の間に格差の生まれない社会造りが必要となる。

 その一つの重要な施策は、発電拠点を小型化して分散化させることだ。それを可能にするのは、風力や太陽光、バイオマス、地熱など再生可能エネルギーを利用することだ。

 もちろん、企業誘致によって地元経済を活性化することもできる。でも企業誘致では、競争に勝って大工場を誘致できたところと、できないところで格差が生じる。

 だからどの地域においても公平に地元経済を活性化させ、地元にお金が落ちるような経済構造が必要となる。

 となると、やはり再生可能エネルギーを利用することだと思う。それとともに、小型発電設備の設置、メンテナンスに地元の手工業業者、設備の管理などを行うサービス事業者などが必要になる。

 さらに電気ばかりでなく、ガス、熱(暖房、給湯)、飲料水などエネルギーすべてに関する供給システムを地元で一貫して行う。地元で排出される廃棄物をエネルギー源として使えば、地元経済に循環性を持たせることもできる。

 地元経済を活性化させるポイントは、地元でエネルギー源を見つけ、エネルギーを使うことにあるといってもいい。そうすれば、経済価値が発電地に残る。

(2020年11月12日、まさお)

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