地道な市民

エネルギー転換は安全保障となるが、それには

 現在、ロシア軍がウクライナ国境に集結し、ロシアがウクライナに侵攻するのではないかと緊迫している。それとともに、ロシアの原油と天然ガスに依存するヨーロッパにおいて、エネルギーが高騰。これまでにないインフレーションを引き起こしている。

 特にドイツでは、天然ガスのロシア依存度が高い。それが現在、ロシア・ウクライナ紛争に対するドイツの対応をより複雑にしている。

 ぼくは、『持続可能な社会が求められる』の章の「社会は持続可能なほうが安全」において、再生可能エネルギーを利用することによってエネルギーの国内自給率を上げると、国際経済の影響を受けにくくなるほか、資源獲得で他国と争う必要がなくなると書いた。

 エネルギーの自給自足が、安全保障になるのは間違いない。

過去の歴史を振り返っても、ぼくたちはこれまで、石炭や石油などの化石燃料を巡って争い、戦争まで起こしてきた。今後は気候変動によって、食糧難と水不足が深刻になる。食糧と水を巡って、将来、国際的な争いが起こるのではないかと心配だ。

 安全保障において、今後、エネルギーに加え、食糧と水がより重要な要因になるのは間違いない。それについては、ベルリン@対話工房のサイトにおいて何回も指摘してきた。

 地球の温暖化はすでに、領土問題も引き起こしている。これまで氷に覆われていた北極海域において、温暖化で氷が溶けはじめた。それに伴い、北極海の海底に埋蔵されている資源を巡り、ロシアや米国など周辺国が領土権争いをはじめている。

 ぼくは、「エネルギーの自給自足が、安全保障になるのは間違いない」と前述した。それだけで、十分だろうか。そうではないと思う。

ベルリンにある在独ロシア大使館

 冷戦後、世界の覇権国だったソ連が崩壊した。ロシアは経済的に停滞し、世界の流れから取り残される。ロシアは、単なる資源供給国に成り下がってしまったのだ。冷戦時の覇権国の面影はない。冷戦後のヨーロッパの安全保障を考えると、西側諸国はロシアに手を差し伸べ、ロシアの経済再建を支援して、ロシアとの経済関係をより強固にしなければならなかった。

 現在のロシア・ウクライナ問題は、西側諸国が自らの見方だけで対応し、ロシアを依然として冷戦時の敵国として扱い、ヨーロッパの一部として対応してこなかったツケでもある。

 ドイツは再エネ化によって、遅くとも2050年までにはほぼ国内でエネルギーを自給自足できるようになるはずだ。そうなると、ロシアの天然ガスは必要ない。それまでに、ロシアを単なる資源供給国ではなく、経済立地国として再建しなければ、ロシアの将来はないといってもいい。

 ロシアは国内の不安を払拭するため、今後、対外関係でより強固な態度を取ってくると思う。そうしない限り、ロシアは内政でも、外交でも、その存在価値を誇示することはできない。

 ロシアを経済的に安定させるのは、ヨーロッパの安全保障にとり、とても重要な課題だった。安全保障は、政治的、軍事的な問題だけではない。過去の経験からしても、経済の問題でもある。これまで、それが無視されてきた。

 地球温暖化に伴う気候変動は今後、安全保障の問題をより複雑に、深刻にすると思う。国内のエネルギー自給率を引き上げ、エネルギーの他国依存を引き下げるだけでは、もう済まなくなる。

 国際紛争を避けるには、世界全体が均一に社会を持続可能にする必要がある。世界各国の持続可能性に、ばらつきがあってはならない。そうならない限り、世界は安全にはならない。

 そのためには、各国が持続可能な世界を求めて国際的に協力し、世界が横のつながりを強化して、安全になる必要がある。持続可能とは、国際的にかつ世代を超えて共生することをいう。世界全体が連帯して持続可能にならなければ、世界の安定はない。先進国やある地域だけが持続可能になっても、世界は安全にはならない。

 世界全体で公平に、国際紛争と気候変動に対応する。自国の利益だけを考えて、競争する時代は終わったのだ。今それが、求められていると思う。

 同じことが、国内でもいえる。

 ある地域だけが、持続可能になるのではなく、地域の格差なく、均一に持続可能となる。そのための負担と成果も、すべての市民で公平にシェアできなければならない。

 そのためにぼくたち市民も自分の生活するところで、何ができるかを考えなければならない。市民一人一人も持続可能な社会に向けて、行動するしかない。

2022年2月17日、まさお

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気候変動で安全が脅かされる
地球温暖化とその危機管理

関連サイト:
人間の安全保障/国連広報センター

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