消費者が価格を決める共感経済

 前回、「非営利経済(貧乏人経済)」の記事を投稿した。それに続いて、もう一つ大切な点について書いておきたい。

 それは、商品の価格についてだ。現在、商品の価格は販売する側が決めて、商品が販売されている。それでは、競争が激しくなるだけだ。価格競争で商品の価格が下がる。

 それは、消費者にとってありがたいことである。しかしそれでは、価格競争が激しくなるばかりで、生産者に十分な利益が出ない。販売者は生産者に圧力をかけ、生産者価格を引き下げるよう求めるだけとなる。生産者は少しの利益を上げるため、血みどろに働かなければならない。

 商品価格の元々安い食料品では、農業が苦労するだけとなる。

 それが、資本主義経済だといえばそれまで。しかしこれからは、消費者も、販売者も、生産者も、誰もが満足できるような経済が成り立つようにすることが必要だと思う。

 それには、安ければいいという消費者意識も変える必要がある。安ければいいという意識は、自由競争をベースとする資本主義的に操作された消費者意識だともいえる。そうではなく、消費者が自分の価値観や政治意識から商品を選択するばかりでなく、商品の価格まで決めることができるようになればいいのではないか。

 かといって、消費者が商品の価格を直接決めるわけではない。

 たとえば再エネ電力販売事業者の中には、電力料金に再エネを拡大するために通常の料金に支援金をつけた料金体制を設けているところがある。再エネを支援したい消費者は、割高の料金を選択すればいい。その支援金は、再エネ拡大プロジェクトなどに寄付される。

「Danke」と書かれたトイレットペーパー(下)とティッシュペーパー(上)は、製品の製造において環境への影響を最小限にして生産された。その点で少し割高だが、消費者は環境にやさしい企業をサポートするかしないか、自分で選択することができる

 あるいはドイツでは、「Danke(ありがとう)」と書かれたトイレットペーパーやテッシュペーパーが販売されている。これは、リサイクルに徹底して製造されたトイレットペーパーとティッシュペーパー。通常販売されているものより、少し割り高になっている。でもリサイクル社会を実現するには、消費者側がそうした商品を購入するしかない。そうしなければ、リサイクル率は上がらない。

 これと同じ論理で、商品に対して美味しいと関心したり、いい商品だと感じた場合に、その気持ちをお礼として代金に上乗せして『ギフト』を渡せるようにしてもいいと思う。それは、「共助」や「共感」、「感謝の気持ち」を商品に示すということでもある。

 レストランで給士さんにチップを渡すのも、「サービスしてくれてありがとう」という気持ちを渡すものだ。それを商品に対してしてもいいと思うのだ。

 それは、小さな地域をベースにしてそういうシステムを導入するのがいい。

 地産地消を進めて地元の商店や商品の販売を活性化するには、この手法がとても適切なのではないかと思うのだ。地元だけで使える地域通貨を導入して、消費者が地元のために代金に上乗せして支援金、共助金、共感金などを支払えるシステムをつくればいい。たとえば、代金の10%や20%、50%を上乗せして支払う。

 スマホ用のアプリをある特定の地域だけで利用できる地域通貨用に設ければ、消費者が簡単に自分の気持ちを商品価格に反映させることができる。

 そうすれば、消費者が生産者、販売者と一体になって地元経済を支えていくことができる。

 そうして、分散型の共感経済形態をつくりたい。

(2023年2月19日、まさお)

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関連サイト:
地域通貨全リスト
Dankeのサイト(ドイツ語)

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