ソーシャル銀行が必要
市民の中には、資金力のある市民もいれば、そうでない市民もいる。社会が市民中心に機能してくようになるには、市民が十分な資金力を持って活動できなければならない。
敢えて俗なことばを使っていえば、貧乏人と金持ちが資金力の差だけで、活動力に差ができてはならない。資金力の差で、市民は差別されてはならないのだ。
かといって金持ちに対して、市民との連帯のために、貧乏人に資産を分配するよう強制しようとも思わない。それはそれで、市民の間に亀裂を産む可能性がある。
貧乏でお金がなくても、貧乏人に市民として活動できるようにするためには、貧乏人の資金力を最低限バックアップする制度が必要となる。
そうでないと、市民は平等に活動できない。
ノーベル平和賞を受賞したバングラデシュのグラミン銀行のことを聞いたあことがあるだろうか。バングラデシュの貧しい農村部で、貧困層を対象に低金利で、無担保の融資を行う銀行だ。こうした銀行を、「マイクロクレジット銀行」という。この仕組みを「マイクロファイナンス」ともいう。
グラミン銀行の資産のほとんどが借り手の貧困層によって所有されているのも、凄いアイディア。借り手のほとんどは女性だ。大半がイスラム教徒の国にあって、とても異例なことだ。
借り手になるには、貧乏人であることを証明するほか、借り手5人で、お互いに借金の返済を助ける互助グループをつくることが義務つけられる。ただしそれは、連帯責任や連帯保証を負うということではない。借金が返済できるように、お互いに助け合うことが義務つけられるにすぎない。
グラミン銀行のアイディアは、世界において貧困層を金銭的に支援する方法として広がっている。
ドイツには、市民による社会的なプロジェクトや再生可能エネルギーなど持続可能なプロジェクトに融資することを目的としたGLS銀行というソーシャル銀行がある。
GLS銀行は組合銀行で、個人が組合員になれる。組合員になるには、少額を出資する。GLS銀行の場合、最低出資額は500ユーロ（約7万5000円）。その他、定期的に会員費も徴収される。会員費は月々にすると、わずかだ。
500ユーロしか出資していなくても、その出資金からの配当があるので、毎年の会員費の一部は配当でカバーできる
組合員の提供する資金が、銀行が活動し、融資する資金源の一部となっている。組合員は、毎年開催される総会に出席して、銀行の活動について意見を述べることができる。協同組合では、票決する時、組合員間において票の重さに差がない。つまり、組合員の出資金に関わらず、組合員1人は1票しか投じることができない。
口座を開設する時、あなたはどういうプロジェクトに融資するために資金を使ってほしいですかと聞かれる。たとえばぼくは、再エネプロジェクトと指定した。なお口座を開設するために、組合員になる必要はない。組合員でなくても、口座は開設できる。
日本でも、ドイツ・シェーナウの市民電力会社が有名になった。シェーナウの市民電力会社は発足時に、地元の配電網を買い入れることになる。その時融資したのが、このGLS銀行だった。
市民向けに少額融資するソーシャル銀行があれば、市民はたとえば集合住宅において、住民が共同で発電、熱供給する場合、資金力がなくても、そのための住民協同組合に出資して、加入することができるようになる。あるいは、自宅の屋根にソーラーパネルを設置する場合にも、資金力がなくても融資を受けることができるようになる。
この場合、融資するリスクは小さい。市民が、発電という『経済活動』に共同で参加したり、自分で発電によって『経済活動』するからだ。市民に資金がなくても、少額融資で市民が自立して活動できるようにする。それが、マイクロクレジットの目的でもある。
少額融資は一般の銀行では、相手にされない。一般銀行には少額では、融資する旨味がないからだ。それでは、貧乏人はいつまで経っても貧乏人で、市民として自由に活動するいことができない。
社会にはまだ、その穴を埋める制度がない。社会は、マイクロクレジットを行うソーシャル銀行を必要としているといわなければならない。ソーシャル銀行は、市民が共同で、連帯して支え合う。
市民が自立して、社会を市民中心社会に改革するには、ソーシャル銀行は必要不可欠だ。どんどんできていくことを期待したい。
（2022年7月29日、まさお）
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関連サイト：
GLS銀行のサイト（ドイツ語）
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