タウシュ

ネズミがステロイドに豹変するなんて

 急死に一生を得てからも、タロウは1週間から2週間の間隔で嘔吐がはじまり、まったく食べなくなる。そのうちに、何回か下痢が続く。

 キャットフードを食事療法用の特別のものにしたことから、アレルギー反応で湿疹がでることはなくなった。嘔吐と下痢がはじまっても、症状は比較的軽い。

 心配なのは、下痢した時に血便が混じっていることだった。血便は鮮血のように真っ赤なもの。赤いから、腸から出血しているはずだ。免疫性が何らかの刺激を受けて狂い出し、腸の粘膜を攻撃しているからだと見られる。

 血便の色が赤黒いと、胃か十二指腸から出血している。そうなると、もっとまずいと思う。

 2日ほどすると、タロウは再び食べはじめ、食欲旺盛となる。同時に、下痢も血便も止まる。その繰り返しだった。

 それを何とか、治してやりたい。

 一般の獣医のところにいっても、腸の粘膜が慢性的に炎症しているからといわれ、抗生物質を注射された後、抗生物質の錠剤を飲まされる。その時に使われる錠剤は、牛の何かが入っているので、牛肉にアレルギー反応のあるタロウはアレルギーで湿疹だらけになる。

 それを避ける方法はないか。何か代替治療はないか。知り合いから、ひょっとしたらあの獣医だったら、何らかの代替治療をしてくれるかもしれないと聞いた。早速、診察してもらうことになる。

 男性の年老いた獣医がいいといわれていたので、そう指名してアポイントを取った。

 獣医に症状を話し、できるだけ抗生物質やステロイドは避けたいと話した。獣医は少し考え込み、ねずみを与えてみてはどうかという。ねずみのタンパク質も軽いので、タロウには合うという。

 ねずみ?

最近のタロウ。ちょっとペンギンのようにも見える

 確かに、ネコはねずみが大好き。でもわが家には、ねずみはいない。獣医は、冷凍のねずみを買うことができるといった。後でわかったのだが、動物実験用のねずみが冷凍され、ペットの餌として売られているのだった。

 連れ合いは悲鳴をあげんばかりに、「それはできない。絶対にいやだ」といった。ぼくはそれでタロウがよくなるのなら、それでもいいかと思った。でも連れ合いがそういう以上、無理だ。

 すると獣医はまた考え、獣医のグループが穀物を使わないキャットフードのレシビをつくり、それを元に製造されているキャットフードがある。その中でも、七面鳥の肉からできたキャットフードを試してみてはどうかという。

 連れ合いは、「それなら大丈夫」といった。

 数カ月前、タロウが死にそうになった時の血液検査の結果も、獣医に見せた。獣医は、膵臓の値は許容範囲内だが、少し悪いので、膵臓のためにもう一度血液検査をして、膵臓の状態を詳しく知りたいといった。下痢が定期的に繰り返されるのは、膵臓に原因があるからではないかという。

 採血するため、日を改めてきてくれるようにいわれた。その時はぼくだけで、タロウをその獣医のところに連れていった。その時獣医は採血後、検査の結果がでたら、上司の女性の獣医が連絡する。それでアポイントを取り、その女医さんに診察してもらってほしいといわれた。

 後からわかったのだが、最初に診察してもらった男性の獣医はすでに定年し、後を若い獣医たちに託していたのだった。年老いた男医は、週にわずかしか診察しないという。

 それから1週間ほどして、女医さんの診察を受けた。女医さんは血液検査の結果から、多少膵臓が悪い程度だとしかいえなかった。それなら、診断は変わらない。まずエコー(超音波)検査をして、腸の状態を見たいといわれた。

 ぼくたちは了解した。結論は同じだった。腸の粘膜の慢性炎症。「それなら、どうして下痢をしたり、しなかったりするのか。説明がつかないのではないか。慢性なら、いつ下痢していてもおかしくないのではないか」とぼくが聞くと、膵臓に問題があるからではないかという返事しかなかった。

 女医さんはすぐに、ステロイドを使って腸粘膜の炎症を抑えるといった。ぼくは耳を疑った。それを避けたいからここにいるのに、何ということだ。ぼくは、「まだ5歳にもなっていない若いネコにステロイドを使って、いずれ効かなくなったらどうするのか」と聞いた。すると、「ステロイドにもいろいろあるので、うまく使い分けていく」と説明された。

  最初の男医はネズミを与えるのがいいといったのに、いきなりステロイドで治療するとは一体、何という変わりようだ。

 ぼくは「それを何年続けるつもりか。タロウは、ステロイド漬けにされる。それもいずれ、効かなくなる。薬が強くなるだけだ。それでは、病気を治していることにはならない。症状を抑えるだけだ。それが、現代医学という対症療法の限界だ」と、怒鳴るようにいった。女医さんは黙って、何もいえなかった。

 ぼくは気持ちを沈め、「あなたのところでは、代替医療をしてもらえる可能性もあると聞いたから来ているのだ。ステロイド以外に方法はないのか」と聞いた。すると女医さんは、中国漢方薬を調合する治療師を知っているが、タロウの慢性症状には効かない可能性が高いという。

 ぼくは話にならないと思い、問題を膵臓に振り向けることにした。それで、「膵臓の具合を調整する方法はないか」と聞いた。すると、「ビタミンB12を注射して、治療することができる」という。ビタミンB12は食べ物からは摂取できないので、注射するしかない。それを数週間続ける。

 女医さんは、「今日注射を1回しておいて、後は3日ごとに注射する。後は、自宅で注射を続けるのがいいだろう」という。もし自宅でうまく注射できない時は、注射をするのでタロウを連れてきなさいといわれた。ぼくたちはそうすることにし、必要なビタミンB12と注射器も一緒に買った。

 こうして、ステロイド物議を終えた。ぼくたちはそれ以来、その獣医のところにはいかないことにした。

2022年1月25日、まさお

関連記事:
急死に一生を得たタロウのその後
抗生物質でアレルギー反応
5カ月間、嘔吐も下痢もない状態がつづく

関連記事サイト:
VET-CONCEPT(ドイツ語)

この記事をシェア、ブックマークする

 Leave a Comment

All input areas are required. Your e-mail address will not be made public.

Please check the contents before sending.