小川の水では、大きな機械をたくさん動かせない

まさお:前回、産業革命とともに青年が粉職人として職を失った話しをした。それは、人間がエネルギーを使って機械を動かすことを学んだからだった。
 でもここでは、ちょっと矛盾していないか。

ハナコ:矛盾?

タロウ:矛盾なんてないよ。産業革命で、人類が機械を使うようになったので、粉職人は職人として必要ではなくなったということでしょう。
 ぼくには、よく理解できるけど。

ま:でもちょっとここで、水車小屋のことを思う出してみないか。水車小屋でも、機械は使っていなかったか。

タ:ああ確かに、機械があった。とても簡単な機械だったと思うけど、それで麦をたたいていたのではないのかな。

ま:そうだ。そして、その機械を動かしていたのは、何だ?

ハ:川の水の流れだった。運動エネルギーと位置エネルギーで動かしたのよね。確か。

ま:その通り。エネルギーを使って機械を動かしてたよね。それなら、産業革命とどこが違うのだろう。どちらも、エネルギーを使って機械を動かしていないか。

ハ:あら、確かにそうだわ。となると、何が違うのかしら。

タ:機械の大きさが違うんだよ。水車小屋の機械は小さいけど、工場の機械はとても大きいよ。

ま:なるほど。確かに工場の機械は大きいね。それでたくさんのものをつくることができる。でも違うのは、単に機械の大きさの問題かな。

ハ:でも機械が大きいから、一度にたくさんのものをたくさんつくれるのでしょう。それで、職人がいらなくなったのではないのかしら。。。

ま:確かに、ハナコが今いったことはその通りだね。でも、大きな機械だけがあればいいのだろうか。それだけで、一度にたくさんのものをつくることができるかな。そのためには、何かが必要ではないか?
 水車小屋のように、小川の水だけで大きな機械を動かせるかな。

1900年前後につくられたとみられる大きなポンプ

タ:小川の水では、工場の機械は動かせない。工場の機械は、電気で動くんだよ。そのためには、発電しないといけない。

ハ:発電なら、小川でもできるわよ。水力発電。

ま:確かにそうだね。でも、小川で水力発電した電気だけで、大きな工場の機械全部を動かせるかな。

タ:そんなの無理。無理に決まっている。

ま:それでは、どうすればいいのかな?

ハ:たくさんの電気を発電すればいいということ?

タ:そうだ。たくさんの電気だ!

ま:ということは、どうすれば一度にたくさんの電気を発電できるのだろう?

タ:大きな発電所が必要なんだよ。

ま:そうだね。大きな発電所だ。でも、大きな発電所だけがあればいいのかな。

ハ:そうか、わかったわ。大きな発電所でたくさんの電気を発電するには、たくさんの燃料が必要になるのよ、多分。

タ:いや、わかった。わかった。それなら、原子力発電だ。原子力発電でたくさん発電すればいいんだよ。

ハ:タロウ。水車小屋からいきなり、原子力発電できるわけがないでしょ!何いっていんのよ。

ま:おっちょこちょいなのは、タロウらしいね。ということは、何だ?

タ:今度こそ、わかった。わかったよ。お願いだからいわせて!

ハ:本当?それじゃ、何よ?

タ:ウランだよ。ウラン。

ハ:タロウったら、何いうのよ。原子力じゃないといったばかりじゃないの。まったく!

タ:ははは。ほら、ハナコはひっかかった。冗談だよ。冗談。ぼくはもう、わかってるよ。石炭だよ、石炭。石炭で火力発電するんだよ。

ま:おお、やっとここまでこれたか。ずいぶんとかかったな。そうだ。その通り。石炭だよ。でも今日はもう疲れたから、ここまでにしよう。疲れたよ。

ハ:わたしも疲れたわ。タロウのおかげで、今日はもうこれで十分。

2021年9月22日、まさお

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関連サイト:
シューベルトの歌曲集「美しい水車小屋の娘」(歌:フリッツ・ヴンダーリヒ(テノール))

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