車中心の都市つくりを変える

 ベルリン@対話工房のサイトでは、ドイツにおいて自転車専用道路が増え、大都市において自転車を重要な移動手段、輸送手段とする動きがあることについて書いてきました。歩行者にやさしい街つくりをすることで、街に活気を取り戻した事例についても紹介しました。

 ドイツでは大都市の宅配に、カーゴバイクを導入する宅配事業者が増えています。自転車による出前サービスを提供するドイツの会社が、ドイツの主要銘柄30社で構成される株式市場DAXにまで上場しました。

 ドイツでは、自転車交通を安全に促進するため、自転車オンブズマンを置く自治体が増えています。歩行者にやさしい街つくりをするために、歩行者オンブズマンを置く自治体があることは、本サイトでもすでに紹介しました。

 これまで、都市は自動車中心につくられてきました。それを環境のことを考えて、自転車中心、歩行者中心の社会に切り替えるようとする都市が増えています。こうした動きは、ドイツばかりではありません。ヨーロッパ全体で広がっています。

 ぼくの暮らしているベルリンでも、自転車に乗っていると、自転車が多くなったなあと感じます。それどころか、道路において自転車のほうが「偉くなった」ようにさえ感じます。

 これまでは自転車で走っていても、自動車が「どけ、どけ、どけ」と大手を振って走っていたように感じました。それが今、自転車で走っていると、自動車のほうが自転車に遠慮がちに走っているようにさえ感じます。

 でもまだ、すべての大通りに自転車専用道路があるわけではありません。交差点など、自転車に危険なところがまだまだたくさんあります。特にトラックなどの大型車が右折する時、自転車との接触事故が起こっています。

 こうした危険を取り除くことが、これからの課題です。自転車交通はまた、歩行者にとっても安全でなければなりません。

 先日、10キログラム余の荷物をキャスター2つの簡易台車に載せて、ベルリン市内を運んだことがあります。それで気づいたのは、歩道の路面の特性と状況によっては、台車がとても重くなったり、軽くなったりすることです。

 台車を一番軽く感じたのは、表面がきれいに研磨された石の上を歩いている時でした。アスファルトやコンクリートの上は、道路が平らでも、台車がとても重く感じられます。平らでも表面がギザギザしているので、摩擦で抵抗力が発生しているからです。

 ベルリンの歩道の表面が、こんなにガタガタ、デコボコしていたのかと気付かされました。交差点では、道路と歩道にわずかに段差があるので、それを乗り越えるのも一苦労でした。

 こうして見ると、ベルリンの歩道が車椅子や乳母車に適していないことがよくわかります。高齢者や小さなこどもが、蹴つまずく危険も高いと感じました。

 歩行者にやさしい街つくりをしているハイルブロン(「歩行者オンブズマン、歩行者にやさしい街をつくる」)とは、こんなに違うのかとびっくりしました。これは、台車を引いて歩いてみないことには、気づかなかったと思います。

車の通行が禁止されたフリードリヒ通りの一部。木が仮に置かれているなど、まだすべてが仮設だ。

 ベルリンの中心街にあるフリードリヒ通りでは今年2020年8月から、一部を試験的に自転車と歩行者の専用にして、車の通行を禁止しました。通りの両側にはお店がたくさんあるので、計画が発表されると、経済界からは強い反対がありました。

 しかしいざ車の通行を禁止して見ると、市民がのんびりと街を散策したり、お茶を飲んでくつろぎながら、ショッピングもできるようになります。そのほうが、人が集まります。お金も落ちます。

 それは、歩行者にやさしい街つくりをするハイルブロンでも同じでした。車の通行を禁止したほうが経済的に効果があることがわかって、経済界からもようやく納得してもらえました(「歩行者オンブズマン、道路を歩行者専用にする」)。

 ただ車を通行止めにしただけでは、人は集まりません。道路に木を植えて、影をつくります。ベンチを置いて一休みできるようにします。路上に、市民同士でコミュニケーションできる場も設けます。さらに、こどもの遊び場も必要になります。

 こうして街の道路を車の通行する場ではなく、人がコミュニケーションできる場に変えます。そうすれば人が集まり、お金が落ちます。わざわざ郊外の広い土地に投資して、どこでも同じようなショッピングモールをつくる必要はありません。

 都市つくりにも、頭の切り替えが必要です。

2020年9月06日、まさお

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