新しい経済指標が必要

指数関数的社会への警告(5)

 これまで何回にも渡って指数関数的に成長する経済とは、どういうことなのか、その結果どういうことが起こっているかについて書いてきました。

 毎年同じことを繰り返していては、経済は成長しません。経済が成長を続けるには、毎年労働者が一人でこなすべき仕事を増やすとともに、労働者の数を減らしていかなければなりません。

 ぼくたちは、くたくたになるまで毎日働かざるを得なくなります。でも、それには限界があります。どこかで、もうできない、もういやという時期がきます。

 それが、バーンアウトになるなど、精神的な病気として表れます。でも今の経済にとっては、誰か倒れたら、代わりになる労働者を見つければいい。そういう論理で動いています。ぼくたちは、使い捨てにされるだけです。

 それにも限界がきます。働ける人が誰もいなくなる可能性だってあります。まだ目先の成長と目先の効率しか見ていないので、限界がくることがわかりません。

 でもそれに気づいてからでは、もう遅いのです。

ベルリン市内の市民の様子

 経済は、持続的にならなければなりません。ぼくたちは今、指数関数的に成長する経済ではなく、持続可能な経済を必要としています。

 そのためには、現在のように前年比で比較するだけの経済成長を経済の指標にしていてはなりません。持続可能度を経済指標に加える必要があります。将来を考えて、経済を成長させることを考えなければなりません。

 持続可能な経済のため、ぼくは経済指標に、たとえば以下を加えるべきだと思っています。
・出生率:
 出生率が下がり、人口が減少するようでは、経済には持続性がありません。
・若者の就業率:
 教育を終えた後の若者が、就職して自立できることが、経済を持続させる上で重要です。
・国家財政の健全さ:
 財政赤字が続くと、その負担を後の世代に押し付けるだけです。それは、経済が健全に持続していることを意味しません。
・社会保険制度の充実度:
 社会保険制度をしっかりさせて格差を縮小させない限り、経済と社会は安定しません。
・環境保護:
 気候変動や環境汚染を抑えない限り、経済と社会は将来その負担に苦しみ、持続できなくなります。ここではたとえば、脱化石燃料度や二酸化炭素の排出量などを指標することができると思います。
・エネルギー消費の削減:
 経済を持続可能にするには、エネルギー消費を増大させずに、削減することが大切です。
・エネルギーの自給率:
 これからは、エネルギーを地産地消することが経済を持続させる上で重要なポイントになります。
・農業の脱産業化、地産地消化:
 エネルギーばかりでなく、農業を有機農業化するなど、農産物を地元で生産、消費することが経済の持続性にとって大切になります。
・文化の充実度:
 市民の精神的な安定を維持させるのは、社会を安定させる上でとても重要です。そのためには、文化も非常に重要な要因になります。

 これらの要因については、何が重要か常に検討し、その比重を考える必要があります。社会と経済の変化に応じて、不要になる要因があるかもしれません。新しい要因が必要になるかもしれません。その比重も変化すると思います。

 それを社会の各分野の代表で構成される委員会で、常に審議して検討します。そうして、持続可能な経済の経済指標をつくります。

 そうすれば、経済指標は指数関数的な成長だけをベースにするのではなく、経済の持続可能性を配慮したものになります。

 今すぐにでも、切り替える必要があります。

(2020年7月24日、まさお)

関連記事:
目先の効率を求めて走り続ける/指数関数的社会への警告(4)
経済が指数関数的に成長するとは何を意味するのか/指数関数的社会への警告(3)
経済は(数学的に)どう成長するのか/指数関数的社会への警告(2)
都市を休める
人口の集中を避ける
駆け足で生きる社会

この記事をシェア、ブックマークする

 Leave a Comment

All input areas are required. Your e-mail address will not be made public.

Please check the contents before sending.