目先の効率を求めて走り続ける

指数関数的社会への警告(4)

 経済成長とは、指数関数的に成長することだと指摘しました。それは、一体どういうことを意味するのでしょうか。

 前年に比べて経済を成長させない限り、マイナス成長になります。前年と同じことをしていては、経済は成長しないということです。

 そのためには、経済効率を引き上げます。では、経済効率を上げるとはどういうことなのでしょうか。

・生産効率を上げます。生産効率を上げるとは、時間当たりの生産量を増やすということです。そのためには、設備投資をして効率のいい機械に変えます。生産工程を改善して、生産工程での無駄を省きます。あるいは、生産量を減らさないまま、生産ラインで働く労働者を減らします。

・事務系では、労働者が一人で処理できることを増やします。労働時間が長くなっても、残業代は支払いません。あるいは、労働者を減らして、一人でこなす仕事量を増やします。そのために、たとえば最新のパソコンに代えるなど、設備投資が必要になることもあります。仕事のプロセスを改善しなければならないこともあります。

走り続ける

 こうしたことを毎年繰り返していかないと、経済は成長しません。ただ設備投資や工程を改善するにはお金がかかります。となると、利益が減り、経済成長を阻害します。

 それでも、毎年前年以上の利益を上げることが求められます。そうしないと、経済は成長しません。不景気でマイナス成長になった後に、経済が大きな伸びを示すのは、前年下がった分伸びしろが大きくなったからにすぎません。これも、前年と比較するからのことです。

 経済には波があります。不景気になると労働者が解雇されるのは、人件費を削減してコストをできるだけ抑えます。それによって、経済がマイナス成長する度合いを低く抑えようとします。

 これが、指数関数的な成長を続ける経済の実態です。ということは、どういうことを意味するのでしょうか。

 経済が成長を続けるには、毎年毎年労働者が一人でこなすべき仕事を増やし、労働者数を減らしていかざるを得ないということです。

 これが、経済成長を続けるための大原則です。

 どうしてそうならざるを得ないのか。それは、前年比でしか経済成長を比較しないからです。それが、成長が指数関数的だということでもあります。目先の成長、目先の効率しか見ていないともいえます。

 だから、労働者はくたくたになるまで毎日働き続けるざるを得ません。その負担も毎年大きくなります。

 もちろん、指数関数的な経済成長で、社会は全体として豊かになりました。でも、その結果、勝ち組と負け組ができて格差も広がります。

(2020年6月19日、まさお)

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