ドイツのコロナデモを検証する(1)

 2カ月ほど前、「「コロナデモ」の真相」という記事で、ドイツのコロナデモの実態について書きました。

 ドイツのコロナデモは、ドイツのほんの一部市民によるものです。その背景には、反政府主義や反エリート主義、反メディア主義があると書きました。ぼくはそこで、こうした一部の抗議活動に煽動されないドイツ社会の熟成度についても書きました。

 しかし日本では、ドイツのコロナデモが社会に拡大し、深く浸透しているように伝えられていることを知りました。

 それは事実ではないといっても、ネット上で蔓延してしまった情報は消えません。まだ大手を振って拡散していると思います。

 ただコロナデモはごく少数派のものだから、放置しておけばいいというものでもありません。この活動は、2014年10月にはじまったペギーダ(西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者)による反イスラム運動とつながっています。それを一つの社会的なプロセスとして、社会現象だと捉えることも必要だと思います。

 ぼくは、その根が1990年代の反難民運動にあるとも思っています。そこには、東西ドイツの分割のと統一の歴史が背景にあるのも忘れてはなりません。

 その意味では、根が深いと思います。

 それをコロナデモだけを捉えて、ドイツ社会にコロナ対策に反対する市民が拡大し、それが今のドイツ社会だとするのには、かなり疑問を感じます。コロナデモには、極右や極左にはじまり、反ワクチン派、スピリチャル派など、いろいろな市民が関わっています。それは、社会現象の一つのプロセスなのです。

 その実態を知るためには、情報ができるだけ正確であるべきだと思います。

 ドイツ社会は多様な社会です。ドイツは、コロナ反対だけで一つにまとまるほど画一化した社会ではありません。あるデモには、カウンターデモもあります。それも社会現象です。それも知ってもらいたいと思います。

 2020年8月1日、ベルリンでコロナデモがありました。コロナデモとしては久しぶりで、これまでで最大のコロナデモでした。

 まず、ベルリンのコロナデモのリーダーがデモを申請します。しかしナチス的な発言が目立ったことから、デモ申請が却下されました。そのため、コロナデモ派の中心となっているドイツ南西部シュツットガルトで活動する人たちが、ベルリンでデモを申請します。

 それで、デモが可能となりました。ドイツは夏休み中です。その意味でも、ドイツ全国からコロナデモ派が集まります。

 この時、警察発表では参加者が2万人。それに対して、主催者発表の参加者数は130万人でした。

 ドイツのコロナデモを追っかけている日本人女性(多分ベルリン在住)のYouTubeは、ドイツ「政府プレス」が当初、警察発表としてデモ参加者を130万人だとしていたのに、検閲がかかって警察もドイツの報道機関も2万人に修正させられたと主張しています。

 通常デモでは、まず主催者が参加者数を公表します。そのため、報道機関はその数字を使って、主催者発表として第一報を発信します。警察発表は、デモが終わって少し経たないとありません。そのため、警察が後で参加者数を修正することはありません。

 ぼくは、デモのニュースをウォッチしていました。ぼくが見ていた限りでは、主催者130万人、警察2万人と思っています。ドイツ報道機関の中には、デモがはじまって、参加者は1万7000人くらいかとしていたところもありました。

 日本人女性のYouTubeは、「政府プレス」がデモ参加者を当初130万人としていた根拠として、Presse.Onlineというネット上の記事を挙げています。

 サイトは、PSM.Media-Nahrichtenagenturというメディア企業が運用しているものです。同社は、企業向けに報道機関用の広報活動を代行するサービス会社です。ところが、同社の住所がSchiffbauerdamm 40, Haus der Bundespressekonferenz ,10707 Berlinとあるものだから、YouTubeでは同社が「政府プレス」とされています。

 これは、ドイツのプレスハウスの住所です。PSM社がプレスハウスに入居しているにすぎません。ドイツ政府の記者会見はプレスハウスで行われますが、プレスハウスはドイツ政府によって運用されているわけではありません。それでは、報道機関の中立性が失われます。プレスハウスの運用は、プレスハウス協会によって行われています。その母体になるのは、ドイツ人記者会と外国人記者会などです。建物には、NHKや朝日新聞、毎日新聞、時事通信など日本の報道機関も入居しています。

 ドイツ政府の報道、広報活動は、政府プレス情報局が行います。ただプレス情報局は、報道機関向けにドイツ政府に関することだけについて情報を発信する機関です。デモなど、政府の活動と直接関係のないことには一切、情報を発信しません。

 その意味で、YouTubeでいう「政府プレス」そのものが存在しません。ドイツ政府がデモについて情報を発信することもありません。そういうことは、考えられません。

 PSM社はメデイアサービス企業であって、報道機関ではありません。その意味で、情報発信においてどの程度裏取りして情報が発信されているのかはっきりしません。実際、同社は後になって、最初に参加者を警察発表として130万人としたのは間違いだったと、誤報を認めています。

 こうした単純ミスは、報道機関ではあってはなりません。ただその単純ミスが、日本人女性のYouTubeでは「大検閲」の根拠になっています。

 報道機関にとって、デモ参加者数に主催者発表と警察発表があるのは「いろは」です。ただPSM社は報道機関ではないので、その点をしっかリチェックしないまま、情報を発信してしまったのだと思います。

 一般的にも、デモにおいて主催者発表と警察発表があるのは知らない人も多いと思います。そして、その数には違いがでます。主催者発表のほうが多いのが普通です。

 ただ主催者発表と警察発表でこれほど差が大きいのは、見たことがありません。ぼく自身、デモ集会のあったティーアガルテンの近くに20年以上住んでいます。その意味で、これまでティーアガルテンで行われたデモや集会、パレードなどをいろいろ体験してきました。

 デモ当日の周辺地域での人の往来や、各地から参加者を運んできたバスの数、デモの後の周辺のゴミの量などを見ると、8月1日に130万人も集まっていたとは到底思えません。

 それをコロナデモの参加者数で「大検閲」があって、デモの参加者数が130万から2万人に書き換えられたとするのは、情報操作もいいところです。

 日本人女性のYouTubeはさらに、ドイツのコロナデモ派が作成したデモ参加者数を検証するビデオを使って、参加者数の2万人はウソだと「立証」しています。

 ここまで長くなったので、そのビデオについては次回検証したいと思います。

(2020年8月21日、まさお)

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関連サイト:
日本人女性のYouTubeビデオは、以下で見れます。
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