ウィーンフィル日本公演への疑問

 今月11月にウィーンフィルハーモニーの日本公演2020が行われると聞き、ちょっとびっくりしました。

 ウィーンのあるオーストリアは、コロナ問題で日本政府から入国拒否地域に指定されています。さらにオーストリアではここにきて、再びコロナ感染者数が急増。11月3日0時から11月末までロックダウンして、人の接触や経済活動を制限します。

 コンサートなどの文化公演も一切実施できません。さらに夜20時から朝の6時まで外出が禁止されています。

 本国でこういう状態で、ウィーンフィルが来日します。

 日本では、今年2020年10月1日から入国者の水際措置が緩和されています。そのため、ビジネスなどの目的であれば、事前に本国でPCR検査を受けて陰性証明書を提出するなどして防疫措置を守れば、日本国籍を持たない人でも入国できるようになりました。ウィーンフィルの入国は可能だということです。

 ただ、入国する人数が制限されます。入国後、2週間の隔離が義務つけられるほか、公共交通を利用することもできません。ただし、日本での受け入れ側が隔離状態をしっかり把握して管理すれば、その間に活動することも可能になっています。

 この条件で、ウィーンフィル公演が可能なのだと思います。招聘元のサントリーホールの説明を見る限り、日本政府の水際措置規制に添って対策が講じられているように見られます。

 ただここで、いくつかの疑問が出てきます。

 たとえばドイツの場合、コロナ感染者の半分近くが空気感染によるものだとされています。そのため、管楽器奏者や合唱団が入る場合には、空気感染をできるだけ避ける対策が講じられます。

 コンサートホールでは、空調設備があって換気がしっかりしているので、空気感染を心配する必要はないというかもしれません。

 でもその空調設備に、ウイルス除去フィルターが装備されているでしょうか。その特殊フィルターがないと、空調設備は排気口から吸引された空気をウイルスを除去しないまま、給気口からコンサートホールに戻してしまいます。

 その点、各コンサートホールの空調設備がどうなっているのかが、気になります。

 招聘元サントリーホールの説明によると、宿泊施設ではフロアーを分け、専用の食事会場も設けて、一般客との接触を回避するとあります。

 オーケストラ楽団員が宿泊するのは、高級ホテルだと思います。そのホテルにも空調設備があります。病院では、一般病棟と隔離病棟の空調系統を別々にしてあるので、隔離病棟に隔離しても、一般病棟への影響はありません。でもホテルの場合、客室用の空調系統は分割されておらず、1つしかないはずです。

 となると、宿泊施設でフロアーを分けても、宿泊施設全体を貸し切りにしないと、それほど意味がありません。日本でクルーズ船において感染者が増えたのは、この空調系統がみんな同じだったことにも起因したはずです。過去の教訓がまったく生かされていないと、いわなければなりません。

ベルリンフィルのコンサートホール前にも、11月2日から11月30までの公演がキャンセルされたと張り紙がしてあった

 ドイツでも11月2日から、コンサートなどの文化公演が休止されています。それ以前の公演では、聴衆の入場者数が厳しく制限されていました。コンサートホールでは、聴衆の濃厚接触を避けるため、聴衆間の席をいくつも空席にするほか、着席する場合も、濃厚接触を避ける対策が講じられていました。

 これについても、サントリーホールはどうするつもりなのでしょうか。会場を一杯にして公演を実施するのでしょうか。

 またドイツでは入場者は、コンサートホール入り口で氏名と連絡先を記入して入場を記録しなければなりませんでした。個人データを偽造したことが発覚すると、罰金も課せられました。

 会場を一杯にして、こうした管理はできますか。

 こうして見ると、ウィーンフィル公演の防疫対策はいろんな点で甘いのではないかと思えてなりません。

 さらに気になるのは、その他のコンサートなどの文化公演はどうなっているのかということです。ウィーンフィルの公演は認めるが、その他の文化公演は認めないでは、公演間の公平性が確立されません。

 一部のクラシックコンサートだけが開催されるのではなく、すべての文化公演が開催できるようでなければなりません。

 もう一つの疑問は、水際措置に関するものです。

 ぼくの連れ合いは、これから日本に一時帰国します。まもなく97歳になる母が、ほとんど食べなく、水分もとらなくなったからです。連れ合いは、覚悟して日本にいきます。最後まで看取りたいというのが、連れ合いの希望です。

 緊急を要するので、ベルリンで事前にPCR検査を受け、その陰性証明書を持って入国すれば、入国後2週間隔離しなくてもすぐに母親に会うことはできないのか。日本領事館で問い合わせてみました。でも結局、規則なのでだめだということでした。

 日本人が入国する場合、水際措置として入国後に空港で抗原検査を受け、陰性でも2週間自己隔離しなければなりません。空港から公共交通も使ってはなりません。連れ合いは入国後2週間経たないと、母親には会えないということです。

 隔離期間中、毎日隔離場所に保健所から電話が入り、体温を聞かれるということです。こうして、保健所は隔離していることを確認するのだと思います。

 ここで、入国してすぐに公演できるウィーフィルと、緊急の用件で入国して2週間隔離しなければならないぼくの連れ居いの間に、水際措置に関して公平性がありますか。ありません。それどころか、生死にかかわる緊急時に肉親に合わせない措置は、人権を侵害しています。

 一般市民には目を向けない日本政府の政策が、この水際措置にもはっきりと反映されています。

(2020年11月03日、まさお)

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