マッチ箱原爆は本当に原爆だったのか?

終戦を巡る原爆の謎

 これまでの記録によると、マッチ箱原爆は、「半径1000メートル程度の破壊力がある」(米海軍調書における日本軍技官の証言)、「戦艦を吹き飛ばす事の出来る新兵器」(貴族院議員田中舘愛橘の発言)、「ロンドン市全体をさえ簡単に破壊できる」(佐竹金次陸軍中佐の記事)などと指摘されています。

 これを見るだけでも、マッチ箱原爆の破壊力はマチマチです。

 ぼくはすでに、ドイツの歴史家ライナー・カールシュさんがその著書『ヒトラーの爆弾(Hitlers Bombe)、ドイツ核実験の秘史』において、ナチスドイツが降伏前に2回、原爆実験に成功していたとしていることについて書きました(『ナチスドイツは原爆を開発していなかったのか』)。

 この原爆も小型ですが、マッチ箱ほど小さかったかどうかとなると、疑問です。それほどには小さくなかったのではないかと見られます。でもその小さな原爆ですら、ソ連軍総司令部(スタフカ)の参謀総長アレクセイ・アントーノフが、こうコメントしています。

 ドイツの原爆は小さい。それが使われても、ソ連赤軍に大きな打撃を与えないだろう。ベルリン侵攻も考え直す必要はない。ドイツが原爆を使っても、500万人も戦死者が出る心配はない。ドイツが原爆を保有していても、ソ連赤軍の進攻を止めることはできない。

 ぼくは、マッチ箱程度の大きさの原爆で、核融合や核分裂を引き起こさせる技術が当時あったのかどうか、とても疑問に思っています。その疑問を、『ヒトラーの爆弾』の著者カールシュさんにもぶつけてみました。

『ヒトラーの爆弾(Hitlers Bombe)、ドイツ核実験の秘史』の著者ライナー・カールシュさん

 カールシュさんは、ナチス・ドイツが開発しようとしたマッチ箱爆弾は「原爆ではなかった」と主張します。ドイツでは、ヒトラーが重宝した建築家アルベルト・シュペーアが、マッチ箱大のミニ爆弾について語ったことがあります。「スーパー爆弾」だといわれ、マッチ箱爆弾一つでニューヨークを破壊できるといわれました。

 しかしスーパー爆弾の真相は、これまで一切わかっていません。ナチス・ドイツは第2次世界大戦中、通常爆薬の数百倍も威力のある「スーパー爆薬」の実験を何回も行ったとされています。スーパー爆弾に使うためだったと見られます。

 連合国側はその秘密を明らかにするため、実際に実験に立ち会った親衛隊将校を拘束しました。将校は20年に渡って、拷問するなどされました。しかし将校は、その秘密をまったく漏らさなかったとされています。

 もしそれが事実だとすると、日本はマッチ箱大のスーパー爆弾を原爆と勘違いして、日本で原爆の開発を進めようとしたのでしょうか。

 米海軍の尋問に答えた日本軍技官は、ドイツの開発した原爆の構想図を日本が入手したと証言しています。米海軍調書ではさらに、ナチス・ドイツ降伏時にドイツの潜水艦U234号によって日本に輸送中だった酸化ウランが、原爆開発のためのものだったかどうかわからないが、量からすると、その可能性が十分にあると記載されています。

 しかし構造図があるからといって、当時の日本にそれを製造するだけの技術があったのでしょうか。ドイツからは潜水艦などによって、ドイツの技術者も日本に派遣されようとしていました。

 しかしそうだとしても、日本がドイツからの技術移転によって原爆を製造できたのでしょうか。ぼくは、疑問に思っています。

 『ヒトラーの爆弾』の著者カールシュさんは、ミサイルや戦闘機、レーダーなど一般の軍事技術においても、ドイツからの技術移転はうまくいかなかったはずだといいます。ましてや原爆の製造となると、もっと難しいと思います。カールシュさんは、「うまくいかなくて、よかったのだ」といいました。

 ぼくも、その通りだと思います。

 この辺のことは、ぼくの電子書籍『きみたちには、起こってしまったことに責任はない でもそれが、もう繰り返されないことには責任があるからね』に、もっと詳しく書いています。関心のある方は、のぞいてみてください(以下に、リンクあり)。(つづく) 
 
(2021年9月19日、まさお)

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きみたちには、起こってしまったことに責任はない でもそれが、もう繰り返されないことには責任があるからね(書籍案内)

関連サイト:
きみたちには、起こってしまったことに責任はない でもそれが、もう繰り返されないことには責任があるからね(電子書籍、立ち読みできます)

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