GoHomeロシア

 ロシアによるウクライナ侵略戦争において、西側諸国によるウクライナへの武器供与に反対する人たちがいます。平和主義を求め、武器供与を止めろと主張しています。その後に、外交交渉によって停戦を追求すべきだという論理です。

 武器供与に反対するとともに、和平を求める気持ちはわかります。でもちょっと、待ってください。

 ロシア側に今、停戦する意思はありますか。戦況がロシアにかなり優位になるか、ロシアがウクライナ全土を占領してしまうか、あるいはそれとは逆に、戦況がロシアに俄然不利にならない限り、ロシアが停戦に応じる可能性はないと思います。

 戦況は、硬直しています。この状態が長く続く可能性もあります。この状況で、ウクライナへの武器供与に反対して、お互いに停戦する道は開けますか。今誰が仲介して停戦交渉をしても、お互いに妥協できる点は見つからないと見ます。

 この状況においてウクライナへの武器供与をストップすると、ウクライナは自己防衛できなくなります。平和主義では、自己防衛は認められています。それでも武器供与に反対して、ウクライナに自己防衛を認めないという人もいると思います。

 でも、考えてみてください。ウクライナがロシアに占領されて、平和になりますか。

 キーウ近郊で起こったブチャの虐殺を思い出してください。そのような虐殺が、ウクライナ全土で繰り返される心配が出てきます。その時世界は、何もできません。たとえウクライナ市民が生き残っても、ウクライナ市民の人権が擁護される保証はどこにもありません。

ベルリン中心街のメイン通りにある在独ロシア連邦大使館

 ウクライナとロシアでは、戦力が違いすぎます。この点でこの戦争は、非対称だといわなければなりません。その非対称な状態を西側から武器を供与することによって、ウクライナが何とかロシアと対等(対称的)に戦い、自己防衛できる状態をもたらしています。

 ウクライナに武器が供与されないと非対称度が高まり、ウクライナ側はゲリラ戦で対抗せざるを得なくなります。ゲリラ戦が長期化するほうが、泥沼だと思います。平和どころか、停戦交渉さえ実現できなくなります。

 ウクライナがロシアに占領されると、戦争はそれで、名目上終わります。しかしそれで、ウクライナに平和が訪れますか。それに加え、勝利したロシアとプーチン大統領の戦争犯罪に対して、世界は何もできなくなります。

 侵略戦争に反対するのは、侵略する側に「GoHome」という強く主張することです。侵略する側に撤兵させる以外にありません。撤兵なしに、和平はありません。その時、ウクライナが領土の一部を失うことを覚悟しなければならないことも考えられます。それでも、ウクライナがもう侵略されないほうがいいのです。

 しかしその場合、残ったウクライナの領土をもう絶対に侵略しないと、ロシアに保証させることができるでしょうか。そのためにはどうすればいいのか、ぼくには思いつきません。ロシアはウクライナをロシアの一部だと思っているから、侵略するのです。ロシアがいったん停戦に応じて撤兵しても、いずれ新たに侵略してくる可能性が残ります。

 その時、ウクライナと国際社会はどう抵抗しますか。今回と同じことが繰り返されるだけです。それで、ウクライナは平和になれますか。

 武器供与に反対して停戦となり、平和がくることにこしたことはありません。でも現状では、武器供与に反対するだけでは、停戦となる希望はどこにもありません。長期に渡って平和になることも考えられません。

 西側から武器供与が続けば、さらに人命が失われます。それを許せない気持ちはわかります。でもウクライナ市民の気持ちを考えると、ぼくにはぼくの気持ちだけで、武器供与に反対することはできません。武器供与反対とだけ主張することも考えられません。

 ロシアに対してGoHomeと撤兵を求めないで、武器供与に反対するだけでは、ロシアの思う壺だと思います。武器供与に反対している人たちの議論を聞いていると、この人たちにとって「平和」とは何なのか、単なる物語になっていないかと疑問に思えてなりません。

 自分の不安な感情を沈めるために、「平和物語」を求めているように感じます。しかしウクライナでは、実際の人の命に関わる問題なのです。それは、「物語」ではありません。現実の問題なのです。

 必要なのは、ウクライナ市民の平和です。世界全体の平和です。そして平和は、持続的なものでなければなりません。ぼくの気持ちの平和ではありません。

(2023年3月24日、まさお)

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関連サイト:
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