核燃料サイクルの幻想
日本には、燃料資源がない。それなら、どうすれば長期的に電力を安定供給できるようになるのか。一旦輸入されたウランを核燃料として原子力発電に使い、それを使用した後、何回も繰り返して再処理して使う。
このメカミズムが「核燃料サイクル」といわれるものだ。
具体的には、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出してMOX燃料を製造し、それを高速増殖炉などで燃やす。使用済みMOX燃料もさらに再処理すれば、MOX燃料をずーと製造し続けることができる。
日本には、この核燃料サイクルが確立されれば、永久に原子力発電を続けていくことができるという神話がある。
でも、現実を見てみよう。
これまで再処理を続けてきたのは、イギリスとフランスだけ。イギリスは、再処理をすでに断念した。日本も六ヶ所村に再処理施設ができているが、問題続きでまだ稼働させることさえできない。来年稼働する予定ともいわれるが、本当かどうか、実際に稼働してみないことにはわからない。
日本では、使用済み燃料を最初に1回再処理することさえもまともに実現できていない。それでいて、何回も再処理を重ねて原子力発電を永遠に続けることなど夢もいいところだ。
再処理して製造されるMOX燃料を使用するプルサーマル計画も、日本では予定通りには進んでいない。核燃料サイクルを実現する上で重要となる高速増殖炉については、問題続きでまともに開発できない状態だ。
再処理することで、高レベル放射性廃棄物も残る。それを処分することも考えると、再処理するのはかなり割高になることもわかっている。
それでいて、核燃料サイクルに固執するのはなぜか。
よくわからない。常識からすれば、技術的にも、経済的にもどこかわけのわからないことが行なわれているとしか思えない。無駄遣いもいいところ。
それに対して、たとえメガソーラーを設置するにしても、格段に割安だし、数カ月後にはすでに発電もできる。原発を建設するには、どんなにうまくいっても10年はかなる。それも計算上で、実際には20年くらいかかると思っていい。
それでは、どうすればいいのか。答えは簡単だと思う。
再生可能エネルギーに切り替えれば、発電施設は安く、早く完成する。その上、事故があっても、放射能に汚染される心配もしなくていい。事故後の処理も、莫大なコストも発生しない。再処理によって得られるプルトニウムが核兵器に使用される心配もない。
そうなれば、一石二鳥どころが、一石数鳥だ。その事実を見ないで、核燃料サイクルに固執する。どう考えても、幻想にとらわれているとしか思えない。
その幻想から解放されれば、社会は換わるはずだ。
(2020年12月03日、まさお)
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