地道な市民

産業革命が大きな転機だった

 人類がはじめてエネルギーを利用することを学んだのは、火を利用することだったと思う。太陽エネルギーを利用して、火をおこした。それによって、人類は光エネルギーと熱エネルギーを使うことを知る。

 火によって、夜暗いところに灯りを灯すことができるようになった。それは同時に、夜に野獣から身を守ることにもなる(光エネルギー)。

 寒い時に、暖をとることができるようになった。植物に火を通すことによって、これまで食べることのできなかったものが食べることができるようになった(たとえば後の話になるが、米、ジャガイモなど)。生肉に火を通すことで、肉を長持ちさせることができるようにもなる(熱エネルギー)。

 人類が次に、エネルギーを有効的に使うことを知ったのは農業だ。農業によってたくさんの食糧を生産できるようになった。その結果、人口も増える。

 ここでは、野焼きによって農地が開拓された(熱エネルギー)。野焼きによって残った灰は肥料になった(化学エネルギー)。農業で農作物が育つのは、植物が光合成を行うからだ。そこでは、太陽からの光エネルギーが使われる。

 たくさんの農作物を栽培するには、大きな農地を耕さないといけない。人力だけでは不可能だ。そのために、牛や馬などの家畜が利用された。収穫した多量の農作物を運ぶためにも、家畜が利用された(運動エネルギー)。

 収穫した穀物をパンなどにするためには、製粉しなければならない。そのために水車小屋ができる。そこでは、位置エネルギーが運動エネルギーに変換される。

 人類はこうしてエネルギーを利用しながら、進歩してきた。ただここまで、人類は自然のエネルギーだけを利用していた。

 次に人類がエネルギーを利用する上で、とても大きな転機が現れれる。それは、18世紀後半にはじまった産業革命だ。

 産業革命のプロセスにおいて、人類は電気を機械的に発生させることを学んだ。さらに蒸気機関と内燃機関を発明することで、エネルギーを一度にたくさん利用できるようになる。

 ここでその燃料として利用されたのが、石炭や石油などの化石燃料だ。どうして、化石燃料はエネルギー(源)なのか。

 それは、遠い過去に光合成によって成長した樹木などの植物に、化学エネルギーが蓄積ていたからだ。それが化石化したのが、石炭や石油だ。だからその中に、化学エネルギーがある。

 たとえば蒸気機関では、燃料(化学エネルギー)を燃やして水を沸騰させ(熱エネルギー)、蒸気を発生させる。その蒸気が、タービンなどの機械を動かす(運動エネルギー)。

 現代の技術と豊かさは、産業革命なくしてはありえない。その意味で、産業革命は現代社会を築いた基盤だといっていい。

 でも化石燃料を燃やすと、二酸化炭素が発生する。

 ベルリン自由大学のラインホルト・ラインフェルダーさんら国際的な研究者が国際的科学ジャーナル「Nature」のオープンアクセスジャーナルである「Communications Earth and Environment」で発表したところによると、人類が産業革命開始時点から年間に排出した二酸化炭素の量は、以下の通りだ。

1750年頃: 0.0009ギガトン
1850年:  0.2ギガトン
1950年:  5.3ギガトン
2017年: 36.1ギガトン
(ギガは10の9乗)

 上記のデータからすると、人類は産業革命のはじまる頃から1950年までの200年の間に、約500倍の二酸化炭素を排出するようになった。さらに現在、戦後の経済成長期を経ると、ぼくたちは産業革命のはじまった時期に比べ、3500倍以上の二酸化炭素を排出している。

 ラインフェルダーさんらのスタディによると、人類が1950年までの11,700年間に消費したエネルギーは14.6ゼタジュール。それに対し、1950年以降に消費したエネルギーは22ゼタジュールにものぼる。ジュールはエネルギーの単位で、ゼタは10の21乗だ。

 こうして見ると、人類が戦後の経済成長を経て戦後に消費したエネルギーは、それよりも過去約1万2000年間に消費したエネルギーの約1.5倍にも相当する。人類が産業革命を経て、たくさんのエネルギーを消費し、さらに戦後の経済成長によってエネルギー消費が莫大に加速されたことがわかる。

 人類はそれとともに、たいへん豊かになった。でも、豊かさと貧困の格差が拡大させたのも事実だ。それは、化石燃料を所有することが資本の基盤になるからだ。化石燃料があれば、豊かになれる。でもないと、貧困に苦しむ。

 社会が豊かなところでは、それだけ化石燃料を燃やしてたくさんのエネルギーが消費される。その結果、二酸化炭素の排出が増大し、地球が温暖化する。人類は気候危機に直面することになる。

 そんなことぐらいわかっているよと思う人も、多いと思う。でもここでもう一度、おさらいしておきたい。

(2020年12月10日、まさお)

関連記事:
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関連サイト(英語):
Extraordinary human energy consumption and resultant geological impacts beginning around 1950 CE initiated the proposed Anthroposene Epoch

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