市民中心社会で行政コストを激減

 市民中心の社会では、ベーシックインカムを導入するほか、公共教育を無料化するべきだと書いた。そう主張するだけでは不十分だ。そのための財源をどうるのか。それについても、書いておかなければならない。

 まずベーシックインカムと公共教育の無料化によって、どういう変化が起こるのだろうか。

 それによって、これまでの社会福祉制度が大幅に改革される。生活保護も失業手当も不要になる。さらに育児支援、少子化対策として給付される育児手当や児童手当なども必要ない。

 こう書くと、ベーシックインカムと公共教育はこれら社会福祉手当の代わりになるものかと思うかもしれない。いや、それだけではない。社会福祉制度では、手当を給付するために、厳重な審査が行われる。そのために、たいへんな時間と人材、労力が使われている。

 それに対してベーシックインカムと公共教育の無料化には、審査はほとんど必要ない。その結果、そのためのコストが大幅に削減される。つまり、社会福祉に係わる手当がベーシックインカムと公共教育の無料化に代わるので、これまでの社会福祉政策に係わる行政コストが大幅に削減されるのだ。

 それだけで、ベーシックインカムと公共教育の無料化に必要となる財源をすべて確保できるかどうか。それは、ベーシックインカムの枠で市民一人当たりに給付される額次第。その点で、給付額は慎重に検討されなければならない。

将来、ものづくりにおいては自動化が進み、生産ラインではこうしたロボットしか『労働』しなくなることが考えられる。写真は、ソーラーパネルの生産工場で撮影した

 将来の変化を考えると、それ以上に社会・経済政策においてもっと重要な問題が発生する。それは、インターネットに加え、人工知能(AI)が実用化されると、ぼくたち人間の働く場はロボットなどの機械に奪われていくことだ。これまでもすでに、人間の労働が生産の自動化でロボットなどによって奪われてきた。それがより、加速する。

 現在の税制制度は原則として、ぼくたちが働くことによって得る所得に対して課税する。これは、労働に課税されているということでもある。しかしぼくたちが労働の場を失うと、人の労働には課税できなくなる。それによって税収が減ると、公共財政が成り立たない。課税する対象を変えなければならない。税制制度を大幅に変更しなければならなくなる。

 ただ今回は、将来課税対象とすべきものは何かについては論じない。それは、次回考えることにする。ここでは、行政コストの問題についてだけ取り上げたい。

 行政コストの問題から見ると、人間の労働が課税対象とならなくなるので、税務署において所得税申告書類を審査する行政手続きにおいて、仕事量が大幅に削減されることがわかる。その結果税務手続きにおいても、行政コストがかなり削減できる。

 現在社会の抱える問題を考えると、将来、社会制度を改革しなければならない。それを市民中心社会を念頭において改革すれば、行政コストを大幅に減らす可能性が生まれる。その分を市民中心社会の基本政策とすべきベーシックインカムの導入や公共教育の無料化に振り向ければ、財政負担がそれほど増えないことがわかると思う。

(2023年4月11日、まさお)

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