資本とインターネットへの課税がメイン

 現行の税制システムは、人の労働に課税するのを原則としている。しかしものづくりの自動化で、人の労働は減るばかりとなる。かといって実際に労働するロボットに課税するにも、それが国際的に統一して行われないと、ロボット税を導入した国は国際競争に負けてしまう(「ロボット税といいたいところだが」)。

 結局、人であろうが、ロボットであろうが、労働に課税するのは限界にきているということでもある。

 そういうと、いや労働ばかりではなく、資本や企業の利益(法人税)にも課税されているではないかというかもしれない。問題は、資本や企業の利益に対する課税率が労働への課税率よりも低いことだ。現行の課税システムでは、金持ちが俄然優遇されている。

 いい方を変えると、資本主義の下では資本にあまり課税されていないということでもある。

 これが、貧富の格差をより拡大させている。

ドイツの未来館FOTORIUMでは、3Dプリンターで自動制作されたものが展示されていた

 今後デジタル化がさらに進んでで、AI(人工知能)や3Dプリンターが普及してくると、これまで人が行なっていた労働はロボットなどの機械に奪われていく。人はそれだけ、働く場を失う。

 もう一つの問題は、デジタル化とインターネット化で国境が目に見えなくなることだ。その結果、国単位で課税される現行の税制システムでは、公平な課税ができなくなる。デジタル化とインタネットで利益を上げる企業の利益は、各国毎に課税することはできない。ある国で利益をあげても、その利益は利益の出た国から逃げていって課税できない。インターネット企業の本社のある国でしか、利益に課税されない。その傾向は益々、進んでいくと思う。

 その結果、デジタル化とインターネット化による利益は、デジタル化とインターネットを使って利益を上げる一部企業だけに集中する。すでに現在もGoogleやFacebookを見れば、わかると思う。

 それとともに、格差がさらに拡大する。

 資本とインターネットに対する課税において、現在すでに大きな不公平があるのはわかると思う。そこにメスを入れない限り、格差は大きくなるばかりだ。

 最近になってインターネット企業への課税問題で、国際的に最低課税率を合意できたのは大きな進歩だった。

 いずれにせよ、資本とインターネットによる利益は大きい。それだけに資本とインターネットへの課税は今後、税制制度において直接税税収の大きな柱にならなければならない。

 一般市民に対しては、消費に対して間接的に課税するだけに止めるべきだ。消費税や売上げ税がそれに相当する。一般市民は将来、労働する手段を失っていくのだから、もう労働に所得税を課する時代ではない。それ以外に課税する対象をはっきりとさせないと、これまで通りの税収を得ることはもう不可能だ。

 将来デジタル化とインターネット化、ものづくりの自動化が進む中で、労働に代わって課税して税収を得る対象は、資本とインターネット以外にない。いや、そうせざるを得なくなると思う。

 ぼくはこの章で、ベーシックインカムの導入と公共教育の無償化を主張した。それには、十分な財源が必要だ。その財源は、これまで支出してきた社会保障費と行政コストの削減によって浮く経費、資本とインターネットへの課税による税収が主なものとなる。

 それで財源が十分かどうかは、各国の事情によって異なると思う。ただ財源となるものの総額に応じて、ベーシックインカムの額を決めることにもなる。

(2023年5月26日、まさお)

関連記事:
ロボット税といいたいところだが
市民中心社会で行政コストを激減
公共教育の無償化
ベーシックインカム

関連サイト:
ドイツの未来館FUTURIUM(ドイツ語、英語のサイトもあり)

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