米国方式か、ドイツ方式か

 ジェレミー・リフキンのことは、日本でも「第三次産業革命」や「限界費用ゼロ社会」などの著書で知られていると思います。

 この秋には、「The Green New Deal」という新しい本も出ました。日本でもいずれ、翻訳本がでるのではないかと思います。

 その他にも、トニー・セバの「クリーン革命」なども、エネルギーから見て、将来社会はどうなるのか、そのビジョンを描いている本だと思います。

 リフキンの書いていることも、セバが書いていることも、ぼくはそうなるのだろうなと、とても参考にさせてもらっています。

 セバの「クリーン革命」については、あるドイツ人の再エネの専門家から「新しい再エネのバイブル」になる、といわれて知りました。ただぼくは読んでみて、そうは思えませんでした。

 リフキンについても、限界費用がゼロになると、社会が大幅に変わらざるを得ないのはよくわかります。今回の新しい「The Green New Deal」においても、化石燃料をベースとした社会が崩壊していくのは、その通りです。そして、その転換がうまくいかないと、人類が滅びる危険があるのも、そうだと思います。

 リフキンは、再エネの市場シェアが14%を超えるかどうかが、分岐点になるといいます。14%を超えると、投資ファンドなどの投資の流れが化石燃料から再エネに変わっていくといいます。

 確かに、再エネが増えると、投資の流れ再エネに変わります。でもドイツの状況を見ると、再エネへの投資の流れは、再エネで発電された電力を市場より割高で買い取る固定価格買取制度(FIT制度)が投資の安定性をもたらしているから起こっています。

 再エネのシェアが14%程度では、FIT制度なくして、再エネには投資されません。その点、ドイツではリフキンのいっているようにはなっていません。

 リフキンも、セバも米国人です。二人は、広いアメリカの土地に、大型の太陽熱発電所やメガソーラー、巨大な風力発電パークなどを建設するのをベースにしています。そういう大型設備であれば、投資ファンドも投資します。

 でも、一般世帯や地方自治体の小さな再エネ発電設備に、投資家は誰も投資しません。

 でも再エネでは、この小型の発電設備がとても重要なのです。ドイツの再エネへのエネルギー転換は、小さな発電設備をベースにしています。その点で、米国インテリ二人の構想するビジョンは、そのままでは当てはまりません。

 二人は、自動車が格段に減っていくことや、電力需要が増えるなども警告します。それに、備えなければなりません。もちろんだと思います。限界費用のないことが、これからの社会と経済においてとても重要なポイントになるのも、よく理解できます。

 でも、限界費用のない社会において、経済はどのように成り立っていくのか、市民はどのようにお金を稼いでいくのかになると、ビジョンがまだはっきりしていないように思います。

 限界費用のない社会では、経済はこれまでの論理では成り立ちません。その時、社会はどのように変わっていき、労働はどうなっていくのでしょうか。

 それには、まだ誰もはっきしたビジョンを描けていないと思います。ぼく自身は漠然と、お金がなくても成り立つ社会ができていくのではないかと思っています。でも、それがどういうものなのかは、まだ想像できません。

 ぼくは、再エネに進む道には、こうではなければならないという王道はないと思います。というのは、再エネは地元で使うものだからです。その条件は、その土地によって異なります。地元に与えられた条件を把握して、地元にあるエネルギーをどう利用するのか。それを考えて構想するのが、再エネの基本だと思います。

 だからといって、リフキンとセバが間違っているとは思いません。二人のビジョンは、米国での条件をベースにしているのだということです。だから、米国で起こるシナリオを描いているのです。

 それを読み間違えてなりません。二人がこういっているから、こうなる、こうしなければならないということではありません。

 でも二人の基本的な考え方は、日本にもたいへん参考になると思います。

2019年11月03日、まさお

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