自給自足がこれからのキーワード

 コロナ禍とウクライナ戦争で、グローバル化による問題が浮き彫りになっています。多くの製品は、世界中で製造、生産された部品で構成されています。グローバル化で製造や生産が世界中にまたがり、サプライチェーンも世界で蜘蛛の巣のようにはりめぐらされています。

 といっても生産拠点は、安価で生産できるところに集中しています。中国が世界の生産工場になったのは、グローバル化のおかげです。世界は二酸化炭素の排出を中国に『委託』し、自分たちのところは、きれいだと主張しているにすぎません。

 パンデミックや戦争によって、製品を構成する部品が一つでも届かないと、製造プロセスがストップします。製品を完成させることができません。それが、食糧とエネルギーにもいえることが、ウクライナ戦争によってより明らかになっています。

 気候変動による異常気象によって、それまでのサプライチェーンが機能しなくなる危険もより高まっています。

 その背景に、供給源をコスト削減を目的に安価に生産できるとことに集中させて巨大化させ、供給源が一本化されてきたことがあります。

 その対抗策として今後、供給源を小型化、分散化させることが重要になります。それが、製造を安定させるためのリスク管理だともいわなければなりません。

 サプライチェーンに影響を与える要因は、とても多様です。グローバル化された社会においてはむしろ、製造・生産拠点をできるだけ消費地に近いところに持ってくることも、リスク管理になります。

 生産の中国依存から脱皮し、国内生産や周辺地域生産に転換させることを考えなければなりません。

 世界がグローバル化すればするほど、自給自足する意義が高まっているといえます。それは工業製品ばかりでなく、エネルギーや食糧にも同じことがいえます。

 生活に必要なものは最低限、地元や国内、周辺地域で調達できるようにしておくほうが、安定供給が保証されます。そのほうが生産以外の要因に影響されず、効率がいいこともわかります。それに伴い、製品や産物の輸送距離が短くなるので、自給自足が省エネばかりでなく、気候変動対策にもなることがわかります。

 こうして見ると、国内あるいは周辺地域においてできるだけ多くのものを自給自足できるようにするのが、今後の対策の重点になるといわなければなりません。

 ぼくは先日、ベルリンから東に電車と車で1時間ほど離れたビーネンヴェルダーにある有機農場にいってきました。ちょうど、その農場で農場祭があったからです。農場では、世界中から若者が集まり、集団で有機農業が行われています。若者たちは、農場の建物や農場の敷地内にあるキャンピングカーなどで暮らし、共同生活しています。

 18年前集団有機農業を行う目的で、廃墟になった農場と農地が取得されました。収穫した野菜やその他の産物は現在、ベルリン市内にある直売店や他の有機食品店に納入され、販売されています。

 農場は、人里から少し離れ、自然の真っ只中にあります。周りに見えるのは、緑色だけ。農場までいくには、自動車や自転車など自分で足を用意しないといけません。あるいは、農場から迎えにきてもらうしかありません。

 ポーランド人のマレークが最寄りの駅まで、迎えにきてくれていました。マレークとは、ベルリンで知り合いました。当時より、すっきりと、のんびりした感じがします。知り合った時はまだ、農場に入って間もない時だったからかもしれません。

農場祭にきた若者の中には、テントで宿泊する者もいる

 同じ車に同乗したのは、イラリア人の女性とポルトガル人の男性のカップル。二人はドイツ語がほとんど話せません。車の中では、みんな英語で話しました。

 農場祭に集まったのは、ほとんど若い人ばかり。ドイツ語よりも、英語があちこちで聞こえます。参加者を見ると、メインストリームの価値観は持たず、商業主義に走らないで、自分の生きたいように生きているような雰囲気の人たちばかりです。

 農場も営利を上げるというよりは、自分たちの信念を通して有機農業を貫徹しているような感じ。トラクターなど大きな農業機械が、見当たりません。トイレも屋外に、ポツンと小さな小屋が立っているだけ。排泄物を微生物によって分解、処理させるバイオトイレでした。

 野菜畑には、たくさんの種類の野菜が栽培されています。温室栽培しているものもありました。みんな、青々と光っているのが印象的です。その奥に、ベルリンで知り合ったブラジル人パウラの養蜂場がありました。

 夕食は、農場で採れたばかりの新鮮な野菜で調理されていました。どれも素材の香りと味がたっぷり。薄味で調理されています。素材の味で食べるから。それで十分なのです。

 いや、おいしかった。最高でした。野菜がたくさんの太陽エネルギーを吸収していたのがわかります。

夕食はここで調理された

 農場では、自分たちの農場で採れた新鮮な野菜で食生活し、人里離れたところでみんなが質素に共同生活しています。有機農業で得た収穫物を売って、農場が運営されています。そこには、商業主義で得られる大きな富はありません。それでも、十分に生きていけます。商業主義ではないので、そんなに多くの収入は得られないと思います。豪華な装飾品や高級な洋服、高級車もありません。でもそのほうが、ズーと豊かに感じます。

 これが、自給自足で生きる神髄なんだと思います。そうして生きれば、確実に省エネも可能となります。

 農場の一角に、プラムの木が1本ありました。まだ青い実がたくさんなっています。まだ十分に熟していないのかなとも思いました。

 それをとって、ほおばってみました。ああ、うまい!豊かだ。

2022年8月23日、まさお

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関連サイト:
ビーネンヴェルダーの集団有機農場のサイト(ドイツ語)

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