新型コロナは心配しなくていい?、本当?

 これまで、ドイツのコロナ対策に反対するデモの実態について検証してきました。デモに参加する人たちは、コロナ対策で自由が制限されていると思っているばかりではありません。「新型コロナの問題はでっち上げ」や「新型コロナの影響はない」など、新型コロナウイルスの存在や影響そのものも否定します。

 政治的には、絶対的な個人の自由を主張します。個人の自由が社会全体の自由よりも優先されます。新しい憲法の策定も意図します。それを、トランプ米国大統領やプーチン露大統領の支援を得て実現したいとします。

 これらの点は、ドイツの極右勢力の主張とよく似ています。コロナ反対派が極右勢力をデモから排除しないのには、こうした背景があると思います。

 ドイツの医師の中には、コロナ対策に反対する医師もいます。コロナデモに参加して、「新型コロナはない、自由を束縛されてはならない」などとスピーチします。ハイコ・シェーニング(Heiko Schöning)やボード・シッフマン(Bodo Schiffmann)らのグループです。「議会外コロナ調査委員会(ACU 2020)」という名前で活動しています。

 特に、シッフマンさんのユーチューブビデオは日本をはじめ、世界中で拡散されています。シッフマンさんは耳鼻咽喉科の医師で、原因のわからないめまいの専門家といわれます。

 シッフマンさんはさらに、「民主的抵抗党」(前回の記事「ドイツのコロナデモを検証する(4)」の最後を参照)を立ち上げました。党首となりますが、すぐに退任するなど、よくわからない行動も目立ちます。

 こうした医師には、いくつかの共通点が見られます。
・ウイルス学の専門家ではない
・ウイルスに関する世界中の研究成果を基盤にしていない
・新型コロナに関しても、拡大後に研究調査などによって得られた知見を無視している
・自分たちの主張や研究を、ウイルス関係の専門誌に発表していない
・主張をインターネット上で拡散する
・新型コロナの特性や危険性についてはまだわからないことがたくさんあるにも関わらず、新型コロナは存在しないとか、危険ではないと断定する
・その根拠を示さない
・新型コロナに関し、独自に調査をしている気配がない
・ネット上で公表しているのは、新型コロナは存在しないとか、危険ではないと断定する自称専門家の主張ばかりである

 ぼくにはこれでは、まったく科学的な根拠がないとしか思えません。でも彼らには、科学的根拠があるかどうかは、どうでもいいように見られます。科学的にどう説明しようが、彼らの主張が変わることはありません。

 でもなぜ、こうした根拠のない医師グループの主張が信じられるのでしょうか。

 それは、答えが簡単だからだと思います。新型コロナに関しては、まだわかっていないことがたくさんあります。簡単に結論は出ません。でも医師グループは、「コロナは問題ない」、「コロナなんてない」とはっきりと断言してくれます。

 それが、パンデミックで不安になった人たちを安心させます。マスクを着用したくないという気持ちとも一致します。ロックダウンなどの対策によって経済的な打撃を受けている人たちの心もひきつけます。

 でも本当に、コロナのことは心配しなくていいのでしょうか。

 新型コロナウイルスについては、まだまだわからないことがたくさんあります。これから寒くなるにつれ、インフルエンザと平行して流行する心配もあります。インフルエンザと新型コロナの両方が拡散すると、病院では患者を一緒に収容することはできません。隔離病床が足りなくなり、これまで以上に医療崩壊する危険が高まります。

 インフルエンザの予防を徹底するなどして、そうならないよう祈るしかありません。

(2020年9月04日、まさお)

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