産業革命から脱却する

 人類がエネルギーとともに大きく進歩してきたのは、すでに「再エネいろはブログ」で何回か指摘した。人類は火を利用すること、農業を行うことを学んで格段に進歩した。さらに人類は19世紀後半の産業革命によって、石炭や石油などの化石燃料を使うことを習得する。それとともに、蒸気機関と内燃機関を開発した。その技術をベースに産業が爆発的に発展する。

 それが、現代経済の基盤になっている。

 現代文明は、18世紀後半にイギリスではじまった産業革命に依存している。蒸気機関はすでに1698年にセーヴァリによって発明されていた。その後18世紀はじめにニューコメンによって実用化され、ワットの大改良(1769年に特許取得)によって機械時代が到来する。

 蒸気機関の原理は、燃料を燃やして熱を発生させ、その熱で水を気化させて、その蒸気を動力源として機械を動かすということ。蒸気機関は、電力や石油系動力が現れる20世紀初頭まで、工場においても、輸送においても機械の動力源としてはなくてはならない存在だた。

 それから約250年。現在、工場の機械は電力を動力源とし、自動車などの輸送機械では内燃機関が主流になっている。蒸気機関は、われわれの目に見える範囲からその姿を消してしまった。内燃機関の発達とともに、輸送では内燃機関が主流になったからだ。しかし現在、蒸気機関が依然としてなくてはならない分野がある。それが発電だ。火力発電も原子力発電も、蒸気機関をベースにしている。

 こうして見ると、ぼくたちが依然として産業革命に依存していることがわかる。その基盤になるのは、石炭や石油などの化石燃料だ。化石燃料のほか、ウランも発電に利用される。機械を製造するには、鉄も必要だ。

 人類が利用する資源がすべて有限であることがわかると思う。現在の経済は、有限資源を利用する経済ともいえる。

 それは同時に、資源を持てるか、持てないかによって経済権力と豊さが一部に集中することも意味している。この経済構造は、縦割りだ。末端の個人は有限資源を使うだけ使わせられ、あくせく働かされる。でも利益は、上に居座る資源所有者のものになるといっていい。

 利益を求めて、たくさんのものを造って世界中に輸送する。そのために、たくさんの資源を使うので公害が発生し、環境が破壊される。

 でも有限資源は、いずれなくなる。有限資源を無駄なく利用するため、リサイクルが普及してきた。それを循環経済という。あるいは、今ある環境と資源を次の世代にも維持していくため、持続可能な社会つくりが求められている。

 でも有限資源を使っている限り、経済は完全には循環しない。有限資源は有限でしかないからだ。有限資源を使っている限り、有限資源はいずれなくなる。同時に環境は汚染されるだけ汚染され、破壊される。それでは、持続可能な社会など構築することはできない。

 このままでは、人類は袋小路に入って抜け出せなくなる。それは、有限資源を基盤とする産業革命に依存しているからだ。ぼくたちは現在、そこから脱却することが求められている。産業革命から抜け出さなければならない。

(2020年10月01日、まさお)

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