エネルギーの安定供給は保証されているのか

 電気を安定供給するため、日本ではベースロード電源として原子力と化石燃料(火力)が必要なのだとよくいわれる。ただそこでは有限資源を消費しているので、有限資源はいずれなくなる。それなら、長期的な安定供給は保証されていないはずだ。

 現在の安定供給にしても、燃料となる資源の輸入にほとんど依存しているのだから、資源産出国の政治情勢に大きく左右されているともいわなければならない。日本は石油を、主に政治的に不安定な中近東から輸入している。それも、米国が中近東で軍事力を誇示しているからこそ、日本への石油の供給が保証されているといってもいい。

 ドイツの情報機関BNDは、米国のハイドロ・プラッキング(水圧破砕法)によるシェールガス開発により、米国は2020年までに世界最大の化石燃料産出国になるとしている。米国が現在、やたらと液化ガスを売りたがるのはそのためだ。BNDはその結果、石油を確保するために中近東で軍事力を保持する必要がなくなるとまで分析する。その場合、米国の軍事力に依存して石油を確保している日本はどうするのだろうか。

 それなら、米国からシェールガスを輸入すればいいという話にはならない。日本が米国からの輸入に依存する限り、燃料を米国よりも高く購入する。それで、ものつくりの国日本に国際的に競争力があるのだろうか。とても疑問だ。

 中近東から直接石油やガスを輸入するとなると、日本はそのために独自の軍事力を中近東に保持するか、ロシアないし中国の軍事力に依存しなければならなくなる。日本にそれができるだろうか。

 原子力発電の燃料となるウランにしても同じだ。

 北アフリカのマリでは、暫定政府とイスラム過激派の衝突が激化した。2013年1月、暫定政府を支援するため、フランス軍がマリに侵攻した。その背景には、原子力大国フランスがマリの隣国ニジェール(のagli, Arlit)でウラン採掘を行っていることがある。フランスは、イスラム過激派勢力がニジェールに勢力を拡大して、ウラン供給に影響が出るのを恐れている。

 ドイツもフランスを支援するため、マリにドイツ兵士を派兵している。

 こうして見ると、エネルギーを輸入に依存していて本当に安定供給が保証されるのだろうかという疑問が生まれる。国外でのエネルギーの取り合いで、戦争だって起こりかねない。

 エネルギーを安定供給したければ、できるだけ輸入に依存しないことが、その前提になるはずだ。それも、有限資源ではなく、エネルギー源は無限であるほうが、一番長期的に安定供給を保証する。

 となると、国内で無限にあるエネルギー源を見つけて利用するしかない。日本では、安定供給に対する注目度が高い。ただ日本の安定供給は、短期の安定供給が中心。長期的な安定供給には、それほど関心が向けられていない。

 さらに、ベースロード電源をベースにした安定供給しか考えられていない。しかし発電電力量に変動の激しい再エネが増えると、その変動にいかに柔軟に対応するかのほうが大切になる。変動のあるものには、柔軟性のあるものでしか対応できない。柔軟性のないベースロード電源では、再エネと両立しない。安定供給は保証されない。

 そのことも、知っておきたい。

(2020年11月19日、まさお)

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