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ドイツでは2023年4月15日をもって、すべての原子力発電所が停止した。もう稼働している商業炉はない。
それとともに、ドイツの脱原発は終わったのだろうか。
原発で発電される電力はもうない。しかし原発は、まだ残ったままだ。解体して「廃炉」にされなければならない。原発が廃炉されても、それによって発生する放射性廃棄物も処分されなければならない。
ドイツは、放射性廃棄物を国内で地層処分し、使用済み核燃料など高レベル放射性廃棄物を最終処分する期間を100万年と規定している。
それに対してすでに最終処分のはじまっているフィンランドでは、最終処分の期間は10万年となっている。
ドイツとフィンランドで最終処分期間に大きな差が出たのは、半減期の長いプルトニムの影響をどう評価するかで違いが出たからだと思う。フィンランドは、プルトニウムの放射能が16分の1に下がればいいとしているのに対し、ドイツはそれではまだ不十分だと評価しているからだ。
いずれにせよ、最終処分に何世代にも渡るたいへん長い時間がかかることがわかると思う。
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ドイツ北西部のリンゲン原発では停止後、放射線量が高くて危険な原子炉圧力容器などを放射線量が下がるまで原子炉の中に寝かせておく安全貯蔵という方法で廃炉が行われた。そのため、格納容器(写真真ん中の白いドーム)が30年以上も残っていた |
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最終処分に予定されている期間が終わって、放射性廃棄物による汚染の影響から解放されない限り、人類は原子力発電から解放されない。原発が止まるだけでは、脱原発は終わらないということだ。
脱原発を決めずに原発を稼働させている限り、原子力発電から解放される時期を先送りしているということでもある。
ドイツでは、高レベル放射性廃棄物の最終処分地候補の選定が遅れている。選定を行なって機関が順調にいっても2060年代にならないと、最終候補地を勧告できないとした。しかし政府は今のところ、それを2046年までに前倒しするよう求めている。
最終処分候補地の選定が遅れることで、中間貯蔵にも大きな影響がでることはすでに報告した(「中間貯蔵の長期化に対策を講じなくては」)。
問題は、それだけではない。
ドイツは最終処分の期間を100万年としているが、100万年先までの世代に、放射性廃棄物の危険をどう伝えるのか。その方法がまだ、まったく見つかっていない。その危険性を伝えることができない限り、原子力発電をしてきた世代は無責任だといわなければならない。
現世代のぼくたちは、放射性廃棄物を安全に処分するには地層処分が一番安全だと判断している。しかしその評価が後世において、変わるかもしれない。そのためドイツでは、最初の500年間、地層に処分した放射性廃棄物を掘り起こして取り出せる可能性を残しておくことになっている。
しかし、500年間も耐久性のある最終処分容器を開発できるのか。それもわかっていない。しかしそういう容器を開発できない限り、500年後に放射性廃棄物を地上に戻すことはできない。
脱原発を完結させるには、まだまだ未知な課題が多いことがわかると思う。人類はなんと、やっかいなものを使ってしまったのか。
(2023年8月24日) |