新型コロナは社会を換えるのか
前回、社会が産業革命から脱産業化、グローバル化、デジタル化へと変化する問題と影響について書いた。その結果、産業化社会で安定した生活を送ってきた中間層が崩壊する。社会は、わずかな富裕層と大多数の貧困層に二分化されようとしている。
ただ社会の換わるテンポが早いので、負け組は省みられない。取り残される一方となる。それが、社会に対する不満と怒りを生む。社会は右傾化し、ポピュリズムの影響を受けやすくなる。
そこに、新型コロナウイルスのパンデミックが発生した。社会生活は、大きな制限を受ける。経済活動の多くもストップした。
社会は、内を向く時間をもらったともいえる。それによって、新型コロナで社会が換わるのではないか、新しい社会がくるのではないかとの期待も生まれた。社会は本当に、新型コロナで換わるのだろうか。
ぼくは、そうは思わない。
新型コロナは、それ以前の社会の問題をより明らかにしただけだと思う。感染者を見ても、社会の底辺で生活している市民に感染がより広がっている。ロックダウンも、経済的にも、社会的にも負け組により大きな影響がでている。
サービス産業において不安定な職に就いている労働者ほど、簡単に解雇された。そういう人たちに対する救済措置は、ほとんどないといっていい。
新型コロナの影響に、人種差別の問題が反映していることもより明らかになった。
教育についてもそうだ。学校の休校で、オンラインによる在宅学習がはじまる。でも、パソコンなどそのために必要な設備を持っているのは、裕福な家庭のこどもたち。底辺で暮らすこどもたちは、自宅に自分の部屋を持っていない。自宅で勉強すること自体は、たいへん難しい。親も、こどもの勉強を見てあげることができない。
親のステータスが、そのままもろにこどもに影響している。こどもの教育格差が、新型コロナでより拡大する。
脱産業化とグローバル化、デジタル化によって勝ち組になったのは、高学歴で技術革新の恩恵を受け、より高い地位と給料を得ている人たちだ。これらの人たちは、自由にたいへん大きな価値を置く。
それに対して、これまでの伝統産業で地道に働いてきた労働者は、伝統産業が技術革新の流れに取り残され、失業する。再就職できるチャンスも小さい。ここでは、伝統に重きを置く保守的な人たちが多い。
裕福な勝ち組は勝つ一方だ。貧しい負け組は負ける一方となる。社会はより一層、はっきりと二分される。
(2020年6月25日、まさお)
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