地道な市民

今、何が起こっているのか

 ぼくは、これまで資本主義からはじめて、グローバル化、デジタル化の問題について書いてきた。この章に入って、技術革新と教育が格差をもたらす問題についても指摘した。

 この章は、問題を提起してから、将来どうすべきかについてつなげるための橋渡し的な章だと考えている。そこで今ここでもう一度、ぼくたちの生きる現代社会において、今どういうことが起こっているのか、どういう問題が起こっているのかをまとめて、しっかりと把握しておきたいと思う。

 グローバル化とデジタル化の問題は、すぐに目につきやすい。それに対して資本主義の問題では、現在がポスト資本主義に向けた過渡的な状況だといってしまえば、それまでだと思う。それでは、何のことかよく実態がわからない。

 現代社会は、18世紀後半に起こった産業革命に大きく依存している。産業革命は、社会の産業化を引き起こしたプロセスだった。その産業化社会が今、まったく変わろうとしている。脱産業化へのプロセスがはじまっているのだ。それは、とても早いテンポで構造改革を要求している。

 脱産業化がサービス産業の拡大をもたらしてきたのは、間違いない。でもそれは、サービス産業の拡大だけではなく、自由な文化の拡大と文化のビジネス化、さらに社会福祉のビジネス化にまで発展している。

 それは、どういうことを意味するのか。

 それは、脱産業化に伴って生まれたサービス産業や、文化と社会福祉のビジネス化によって生まれた仕事が、とても不安定なものであるということだ。いつ、仕事を失うかわからない。収入は安く、安定しない。それは多くの場合、社会になくてはならない仕事だが、社会ではその価値も十分に認められていない。それは、新型コロナによってより明らかになった。

 それに対して、産業化によって生まれた仕事はとても安定していた。だから、収入も安定していた。そうして、安定した中間層ができたのだった。

 でもその安定していた中間層が、脱産業化とグローバル化、デジタル化のプロセスに伴い、大幅にしぼんできている。中間層といわれる層がなくなろうとまでしている。その結果、社会はわずかな富裕層と大多数の貧困層に二分化されようとしている。これは、勝ち組と負け組がはっきりと区分されようとしているということでもある。

 そこに、現代社会の問題がある。負け組には、喪失感が強い。これまで中間層として満足した生活ができた。でも今は、仕事も貯金も失った。社会から取り残されたとの感情を抱く。

 社会の換わるテンポが早いので、そうした人たちには救いの手が差し伸べられないことが多い。社会から取り残された人たちのことが語られなくなる。取り残された人たちの声も、社会に届かなくなる。

 それが、生きることに対する不安となる。社会に対する不満と怒りとなる。それで、社会が単純な論理やフェイクニュースで簡単に影響されやすくなる。社会が右傾化し、ポピュリズムが台頭する土壌だ。

 ぼくは今、社会はこういう状態にあるのだと思う。

(2020年6月11日、まさお)

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