格差はさらに広がるのか

 前回、産業化で生まれた中間層が縮小して社会で格差が拡大していると書いた。同時に、デジタル化で新しい中間層が生まれている。新しい中間層は勝ち組だが、従来の中間層は完全な負け組。その間の格差は、より拡大する。

 ただデジタル化で生まれた新しい中間層にしても、デジタル化がさらに進んむと、中間層として生き残れるのだろうか。

 デジタル化で雇用がより削減されるようだと、新しい中間層もうかうかしておれない。新しい中間層にも、勝ち組と負け組が生まれる可能性が高い。そこで負け組になると、もう中間層ではない。従来の中間層のように、底辺に落ちることになる。

 その場合雇用削減がさらに続き、それに代わる新しい雇用が生まれないと、デジタル化の勝ち組が最終的にほんの一部しか残らない可能性も大きい。たとえば、デジタル化に必要なプログラミングは現在、マンパワーで行われている。でも、その多くが人工知能(AI)に代わってしまうことも予想される。そうなると、多くのマンパワーは必要なくなる。

 その結果、人の働く場がほとんどなくなる。社会はほんの一部の勝ち組と、ほとんどの負け組に二分割される危険がある。その格差は大きく、拡大される一方だと思う。

 新型コロナ禍において、スーパーやドラグストアなどで低賃金で働く労働者や、介護の分野で働く人たちが、社会にとっていかに大切かが認識された。しかしその重要性が再認識されたことで、賃金が上がるかというとそうではない。

 価値観が高まっても、それによって賃金も上がらないと、中間層はできない。これからの課題は、社会がこういう人たちを中間層として拡大させることができるかどうかではないか。

 でもスーパーのレジで働く人たちも、いずれいらなくなる。客が商品につけられているバーコードをスキャンして決算すればいい。介護でも、ロボットがマンパワーの一部を不要にする可能性がある。

 となると、人の働く場所がデジタル化で益々失われる可能性もある。

 今回新型コロナ禍によって、社会にどうしても必要な人たちがいることが再認識された。デジタル化で人の働く場がなくなっても、社会には人が必要とされる場がどこかにあるはずだ。そういう場も創出していかなければならない。それをしっかりと社会として認識し、そういう分野を拡大させることがこれから大切になる。

 そうしないと、人々は生きていくことに不安を感じ、社会に対して大きな不満を抱くだけになる。そうなるのは、社会にとって不幸なことだ。

 本来、社会にはすべての人たちが必要なはずだ。それを社会全体が認識できるかどうか。それが、デジタル化においてこれから重要なポイントになるのではないか。そのためには、社会が得た豊かさをすべての人にどう公平に分配するのかも、考え直さなければならない。

 そうしないと、社会が割れ、不安定になるばかりだ。

(2020年7月09日、まさお)

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