地道な市民 - 2022年7月29日更新

協同組合

ドイツでは銀行、住宅、エネルギーの分野で、市民による協同組合が経済活動において重要な役割を果たしている。ドイツの協同組合は、ユネスコの無形文化財ともなっている。社会がグローバル化し、ネット化すればするほど、小型化、分散化された市民自主管理型経済が求められる。その基盤になるのは、市民による協同組合だ。


ソーシャル銀行が必要

市民が自立して、社会を市民中心社会に改革するには、ソーシャル銀行が必要不可欠となる。ソーシャル銀行は、低金利、無担保で貧乏人に少額融資する。マクロクレジットを行う銀行だ。貧乏人はそれによって、自立できるようになる。ソーシャル銀行は、市民によって共同で、連帯して支えられる。


第8章冒頭文

将来社会はどうあるべきか。これまでの行き詰まった社会を改革し、将来社会にビジョンを持つことが必要となる。そのキーワードは、「市民」と「持続可能」だ。社会が持続可能となり、市民が中心となる社会。それが、将来の社会像だ。それは、石炭や石油などの化石燃料から自然な再生可能エネルギーに転換することによって可能となる。そのための具体的な事例を、ドイツを例にして挙げてみたい。


エネルギー転換は安全保障となるが、それには

再生可能エネルギーによって自国でのエネルギー自給率が上がれば、国際経済の影響を受けにくくなるほか、資源獲得で他国と争う必要がなくなる。しかし気候変動問題によって、これから食糧難と水不足で、国際紛争がより複雑で、深刻になる。それに対して、どうすべきなのか。


共有と共用、共生の哲学

市民が中心となる社会では、たくさんのものが市民の間でシェアされ、シェアリング社会がくると思う。自分の財産や報酬、持ち物などあらゆるものが共有と共用、共生に資するという哲学がその基盤になる。特に、エネルギーや水道、交通、住宅などライフラインや、生活においては地区の隣人同士で、こうしたことが実践される。


所有意識、資本主義、国家意識が変わる

ドイツの国土整備、都市開発では、共有と共用が前提になっている。土地は所有者であっても、自由勝手に利用することはできない。行政によって厳しく管理されている。この共有と共用が、再エネを利用する原則でもある。それとともに、資源を所有する意識が変わるのは間違いない。その結果、資本主義と国家意識も弱体化されていくはずだ。


こどもと家族にやさしい社会

社会が市民中心になり、こどもと家族にやさしい社会になるには、市民が労働者として、決まった時間に拘束されず、柔軟に働くことができるような制度改革と金銭的な支援体制、社会の意識改革が必要になる。育児や介護において、男女が平等に対応できる制度造りが必要だ。その意識改革が一番の難題となる。


市民と科学と倫理

科学が新しい技術を開発するテンポは、非常に速くなっている。ぼくたちは科学や技術が進展するままに、任せていいのだろうか。科学と技術の進歩が、より多くの倫理に係る課題をもたらす。その傾向は今後、ますます強くなるはずだ。倫理問題は、エリートとインテリだけに委ねるのではなく、市民はもっと、市民の視点から社会の倫理の問題に係る必要がある。


再エネとともに変わる社会と市民

再エネとともに一般市民が独立して経済活動を行い、簡単に電力市場に参入できるようになる。その結果市民は、自立して経済活動を行い、社会においてより大きな力を持つ。社会が再エネによって、ダイナミックにボトムアップされる。社会はそれとともに、市民中心に変わっていく。市民が経済と社会の中心になると思う。